本職はプロレスラーだが、その風貌はまさにヤクザ。実際に数多くのVシネマに出演しており、その役柄も組長役が大半ときている。
それも手伝ってか、“組長”の異名を持つ藤原喜明。かつては天竜源一郎や長州力など、大物と渡りあったほどの実力派レスラーでもある。
本職はプロレスながら90年代には、バラエティー番組に登場することもしばしばあった。なかでも、組長が巨大熊にステゴロ(武器を使わない素手喧嘩)で挑むという企画は、とかくリアル過ぎた。

なぜか出川哲朗がセコンド役


それは1994年に放映された、とあるバラエティー番組でのこと。現役のプロレスラーである藤原喜明が、人間相手ではなく、あろうことか本物の熊と一戦を交える企画だった。
しかもセコンド役には、なぜか出川哲朗が。なんとも奇妙な組み合わせだが、一向は巨大熊が待ち構えるカナダへ向かうことに。

藤原喜明、敵地カナダに乗り込む


組長が到着した先は、なんと山の中。巨大熊は実際にそこで生息しているらしく、現地人の物々しい接し方から、臨場感がひしひしと伝わってくる。優に2mを越えるではあろう巨大熊は、カナディアンデビルとして紹介された。
組長も180cm超の大型レスラーだが、それよりも一回りは大きい。特製ネットで覆われてある、檻さながらの野外リングに放されたカナディアンデビルだが、雄叫びは決して大きくはない。ただ、威嚇するかのような重低音は、確実に猛獣だ。
組長は意を決し、カナディアンデビルが待つリングへと向かうのだった……。

藤原喜明VS本物の熊


組長が木からジャンプしてリングに降り立つと、カナディアンデビルは驚いたのか一瞬、後ずさりしてしまう。すかさず組長は、「来いや、ベアー!」とファイティングポーズに入る。しかしそれも束の間、カナディアンデビルが組長を目がけてタックル。先制攻撃に成功したカナディアンデビルは、組長からダウンを奪った。

檻の外にいる出川は、うろたえるばかりで、解説もままならない。すると再びカナディアンデビルが突進し、組長から2度目のダウンを奪う。組長は2度のダウン後、すぐに立ち上がるも、防戦一方。
なんとか攻め入る機会を見計るが、相手(熊)の間合いに上手く入り込めない。そうこうしているうちに、またもカナディアンデビルが突進。今度は組長の左肩を直撃したが、わずかに噛み付いたため、さすがの組長もうずくまる。
その様子を見た現地人は、組長の身の危険を案じ、レフリーストップを提案。そのときの出川は「大丈夫ですか」の一点張りだった……。


熊の圧勝に終わった戦い


結局、「関節技の鬼」とまで呼ばれた組長でも、素手では熊に勝つことはできなかった。もしも組長が間合いに入って、関節技を決めたとしても、おそらく熊はボブサップのようにひっくり返していただろう。
人間と熊、当り前ではあるが、両者にそれだけの差があったことは確かだ。檻の中で対峙して命があっただけでも、幸いといえる。
組長もそれを察していたのか、試合後に「強ぇーなー、生きてたなぁ、ラッキーだったなぁ」とコメントを残していた。
(ぶざりあんがんこ)

※イメージ画像はamazonより藤原喜明のスーパー・テクニック―最強の関節技全公開
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