5月1日からKAT-TUNがジャニーズ事務所初の充電期間に入った。これまでも、音楽制作を行うアーティストが充電期間をとる例はあったが、最も輝く若い時期がカギとなるアイドルとしては異例のことである。

そのまま消えてしまったり、解散してしまうことも珍しくないが、現在もアイドル魂はそのまま、60歳になった今も歌いに踊るトップスター、郷ひろみも人気絶頂期に数回にわたり充電期間をとっていたのだ。

郷ひろみ、20代から数回にわたり芸能活動を休止


郷ひろみは、23歳の時(1979年)に、アメリカにダンスレッスン旅行に出掛けて以来、1980年、1981年、1982年、1983年と、レッスンを目的に渡米している。
歌番組が多く、映画やドラマにも出演する合間にスケジュールをあけて、数週間から1ヵ月以上にわたり日本を離れることは難しかったに違いないが、郷にとって必要な時間だった。
ダンスのレッスンはもちろん、英会話スクールに通い、ブロードウェーでミュージカルを見て、仕事も遊びも貪欲に吸収し、アメリカン・スピリットを身に着けた。当時「自分へのチャレンジ。学んできた結果はすぐには出ないだろうが、少なくとも方法がわかった」と語った。

1985年、二谷友里恵との婚約を発表した翌年の1986年3月、単身でアメリカのカレッジに留学。
出発前にはテレビで特別番組も放映されたが、芸能活動も続け、1年弱滞在した。1987年、二谷と結婚後はニューヨークの新居で暮らしたが、1989年に新居を引き払い帰国した。

1993年1月にリリースした『僕がどんなに君を好きか、君は知らない』のロングヒットが転機となり、3年続けてバラード3部作を発表。アメリカでの生活、活動休止とレッスン、勉強、経験などがようやく形になっていった。郷は「デビューして20年経って、やっと歌が歌えるようになってきた時期」と語っている。

絶頂期の郷ひろみ、「充電期間」をとる理由は


2001年大晦日、紅白歌合戦出演を最後に芸能活動を休止し、ニューヨークに移住。期間を定めない充電期間に入った。
2000年11月、ニューヨークに実家がある一般女性と再婚。偶然か意図的か、結婚とニューヨーク移住、充電期間がリンクしていることから、コアなファンの一部は「結婚するたびに渡米して歌手活動を休止するなら、独身でいてほしい」と嘆いた。

歌手活動を休止してアメリカ行きを決めた後に、1999年、『ゴールドフィンガー‘99』がヒット。活動休止を決めて、周りのスタッフや関係者に説明してスケジュールを調整して準備をするのに1、2年かかったという。50公演を超えるコンサートツアー、年末のディナーショー、『ヤミツキ』という深夜のバラエティ番組にも若い人に混じってレギュラー出演した。
仕事を精力的にこなし、ヒット曲に恵まれ絶頂期にあるなか、充電期間をとることを止める人も多かった。
それでも、「自分を立て直すために、アメリカに行く」という気持ちは変わらなかったという。充電期間(アメリカ留学)について、自身の著書『NEXT』でも、「何を犠牲にしてでも『本当に歌える自分』を手に入れたかった。結果、アメリカで素晴らしいボイスティーチャ―に出会い、宝物の声を手に入れた」と語っている。

「人生にゴールはない」努力を続ける郷ひろみ


「歌えない、踊れないのに、長続きするわけはない」とコンプレックスや不安を抱えていた郷。いつの時期の発言か覚えていないが、「例えば1年間芸能活動を休止してファンが離れていくとしたら、そのまま芸能活動を続けていてもいつかはファンが離れていく」と語っていた。結果は吉とでるか凶と出るかはわからないが、勉強をして力と自信をつけない限り未来はない、と考えていたのだろう。

20代の頃から常に10年先のことを考えて「考え、行動し、継続してきた」と語る郷。30代で「60代をピークにしたい」と発言していたことに驚くが、今も、「人生にゴールはない」と努力し続けている。

アウトプットばかりではやがて枯渇してしまう。郷の場合、フル活動の合間に数回の充電期間をとったことは決してマイナスではない。マスコミやファンに追いかけられない一般人として暮らせるアメリカで、自分を磨き一から学び直しインプットすることで、浮き沈みの激しい芸能界を生き残る実力や精神力を身に着けることができたのだろう。

KAT-TUNの亀梨和也もある雑誌で、活動を続けながら3人体制のKAT-TUNを立て直し続けていくこともできたに違いないが、あえて充電期間を選んだのは「40代、50代の自分を見据えての決断」と語っている。
グループを俯瞰で見つめるプロデューサー的な視点をもつ亀梨。
20代、30代から60代に人生のピークをもっていくために、目標に到達するために、長いスパンで考えていた郷ひろみと、どこか通じるところがあるように思う。
(佐藤ジェニー)

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