来週日曜の『ワイドナショー』に大川興業総裁・大川豊が初登場する。近年はラジオやネット動画での出演が多いため、地上波には数年ぶりのゲストとなる。


大川豊とはどんな人物か


地下鉄サリン事件を起こす前のオウム真理教への潜入、北朝鮮への訪問、日本債券銀行や日本長期信用銀行など経営破綻した企業の株を激安で買い漁るなど、タブーとされる社会的な事象に突撃し、リポートする手法で笑いを提供してきた大川。
このような独特すぎるスタイルのため、冒頭に紹介したように、地上波のテレビには滅多に登場することはない。知る人ぞ知る存在だが、浅草キッドの水道橋博士からは「お笑い現場主義」の姿勢を高く評価されており、放送作家の高田文夫は「軟弱な笑いが多い今、大川豊は体ごと真剣に硬派にギャグ道をつきすすんでいく」(※1)と激賞している。

過激な笑いに取り組む一方で、芸能プロダクション「大川豊興業」の代表取締役社長であり、構成員として江頭2:50や、若手では裁判傍聴芸人の阿曽山大噴火らも擁する。
かつて新人時代を過ごした芸人には時事芸人・プチ鹿島や、『統合失調症がやってきた』『相方は、統合失調症』の著作がある松本ハウス、心臓が右側にあることで知られるチャンス大城など一癖も二癖もある芸人を輩出してきた。

大川豊が芸能事務所を立ち上げた理由


そもそも大川は1983年、明治大学商学部在学中にバンカラ応援団スタイルのパフォーマンス集団として大川興業を結成。「ドンと鳴った花火」の踊りや、『ラブアタック!』など素人参加番組荒らしとして一躍有名になる。
就職活動を試み、「トヨタだろうが、三菱だろうが、ソニーだろうが受けましたよ。大手町に自転車を置いて、面接会場を回った」(※2)ものの153社に落ち、「自分で自分を面接し、自分に内定を出し」、大川興業を株式会社化して代表に就任。1985年には太田プロにも所属するが、徐々に舞台での活動にシフトし1990年に独立。

お笑いの老舗のプロダクションを辞めたのは、自分の追求したい笑いのため。年1回の本公演は本格的な芝居で、多重人格、ネットワークビジネス、ストーカー、監禁といった重いテーマを笑いを通して表現。東京以外に大阪、愛知、福岡を巡演して1万人近くを動員し、NHKに取り上げられたこともあるほどだ。
現在は暗闇演劇という文字通り、劇場内を真っ暗闇にして、音と気配、ときには匂いで劇が繰り広げられる唯一無二のスタイルを模索している。


江頭2:50とのエピソード


かつては江頭も本公演に参加しており、想像しやすい異常な人間から、想像しづらい哀愁漂うサラリーマン、果てはとある高貴なお方まで、と幅広い人物を演じ分けるなど、役者として非凡なポテンシャルを見せていた。

あの語り種となっている『浅草橋ヤング洋品店』における企画「江頭グランブルー」(大きな水槽の中に入ってどれだけ長く息を止められるか競う企画)で4分14秒の記録を出した直後に、本公演の最終日に出演すべく劇場に向かったのである。
事前の江頭から死さえも覚悟しているの様子を感じ取っていた大川。案の定、開場30分前に大川の元に「江頭さんが大変」との連絡が来る。1時間以上の出演シーンがある江頭の代役を構成員全員で分担するべく急きょ、変更の準備をする。

しかし本番の直前、江頭が到着。
『「遅れて、しかも心配かけてすみませんでした」
 オレは初めて江頭を抱き締めて、
「どうだ、いっぱい出して来たか」
 お互いツーカーの仲だ。
「はい、精子を懸ける職業ですから」』(※2)

公演は無事に終了し、精密検査はバイク事故で入院中の尊敬するビートたけしと同じ東京医大病院に向かったのだったーー。

「平成の借金王」とも呼ばれた大川豊


また企画性に富んだライブも開催。ラブホテルを会場にしたライブ、株主総会が注目されている時期には、それをテーマにした「大川興業株主総会」、同じく「大川興業総裁選」を本家の自民党の総裁選に合わせた時期に開催。かつては江頭が総裁の座を勝ち取ったこともある。

このように実験的な公演やライブに見境なく資金を投下するため、借金に次ぐ借金で長らく大川のキャッチフレーズは「平成の借金王」と言われた時期もある。その返済と日々の活動の模様を『ぴあ』にて『金なら返せん!』のタイトルで連載し、単行本やVシネマ化もされるなど、話題を呼んだ。
大川は「今でも借金は7000万円~8000万円ぐらいあるんじゃないですかね!?」(※3)と語っている。


松本人志との接点は?


気になるのはメインを務める松本人志との共演歴だ。ダウンタウンが東京での活動を本格化させたのは、1989年秋。前述の通り、大川が主戦場をライブに移したのが1990年ころ。ちょうどすれ違いで共演歴はなさそうだが、両者とも『ひょうきん予備校』の受講生一覧に名前が確認できる。共演時のエピソードがあるのだろうか……。

さて、大川が放送の中でどのニュースについて語るのか? 気になるところではあるが、一週間に起きたニュースの中から、これぞという出来事をピックアップして語り合う番組であるため、放送まで不明。舛添都知事「政治とカネ」問題なのか、あるいは伊勢志摩サミットの現地ルポなのか、それとも7月に迫った参院選についてなのか。当日の放送に注目しよう。
(小島研一)
 
※1 『寄せ鍋人物図鑑』(講談社)
※2 『金なら返せん! 地の巻』(幻冬舎アウトロー文庫)
※3 リアルライブよりhttp://npn.co.jp/article/detail/49287233/
「大川豊総裁 借金8000万円も動じず「貧乏でも勝ち上がれるシステムを作りたい」」

※イメージ画像はamazonより江頭2:50のピーピーピーするぞ!始末書覚悟の逆修正バージョン [DVD]
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