人気稼業であるため、多くの人から注目される芸能人。当然、彼ら・彼女らへ送られる視線の全てが善意や好意から来るものであるはずもなく、時に憎悪、そして殺意である場合もあります。

先ごろ、小金井市でタレント活動をしている大学生がファンに刺傷される痛ましい事件が起こりました。2年前の2014年、AKB48の握手会会場で、メンバーの川栄李奈と入山杏奈が刃物で切りつけられた事件も記憶に新しいところ。こうした実害以前の段階である「殺害予告」などは、日常茶飯事のようにタレントたちを悩ませています。

このような憎むべき罪無き芸能人へのテロで、思い出される出来事が一つ。1994年、日本テレビに郵送された一通の封筒をきっかけに世間を震撼させた事件がありました。世に言う「日本テレビ郵便爆発事件」です。

安達祐実の事務所社員が重傷を負う事態に


1994年12月21日。麹町の日本テレビ本社へ一通の封筒が届きます。郵便物集配室で仕分けられ、6階の制作センターへと運ばれた後、関連会社に務める女性社員の手に渡ったその郵送物。縦20センチ、横9センチの白色定型封筒で、異常なほどパンパンに膨れ上がっていました。
宛名には「安達祐実 様」の文字。当時、ドラマ『家なき子』への出演で、飛ぶ鳥を落とす勢いだった人気子役への手紙。1日100通以上ファンレターが届いていた彼女ですから、事務所ではなく日テレに送られてくることも珍しくありませんでした。
にしても、この形状。「重たくて何か変ですよ」。あまりにも異形な“それ”を、いぶかしく想いながらも女性社員は、安達の所属事務所・サンミュージックブレーンの西川文郎へ手渡します。

当然、西川も不審に思い、安達の手に渡る前に中身を確認しようとその場で封筒を開封。すると瞬間、耳を聾する乾いた破裂音と共に封筒が爆発。西川の指は吹き飛び、飛散した爆発物の破片で周囲にいたスタッフ2名が軽症を負ったのです。時刻は17時45分、夕方のニュース番組『ニュースプラス1』が放送されている時でした。

おびただしい血のあと……夕方のニュースで実況中継される


この緊急事態を受けて、『ニュースプラス1』では放送内容を急遽変更。18時から番組冒頭で現場の実況中継を開始しました。
散乱した書類や事務用品、救急隊員によって手当を受ける西川、周囲で困惑するスタッフ、そして、床に残る10数分前に飛び散ったばかりの血痕……。生々しい事故現場の状況を克明に、お茶の間へ届けたのです。

これほどの惨事。当然、早急に事実を解明しなくてはなりません。
しかし、物的証拠に乏しかったため捜査は難航。唯一の手がかりが、犯人は、12月21日に安達祐実が日テレにいることを知る者だということ。つまり、業界関係者の犯行ではないかと推測されました。

今度は日テレの井田由美アナウンサー宛てに爆発物が届く


容疑者を特定できないまま3年が過ぎた1997年。またしても、日本テレビに爆発物の入った郵便物が届けられました。宛先は井田由美アナウンサー。本人は危機を免れたものの、またしても負傷者が出る事態となってしまいました。
その後、井田アナと安達祐実にしつこく面会を迫っていた富山県在住の男が事情聴取を受けるも、結果はシロ。その後は有力な情報もないまま、2009年12月に時効を迎えたのです。

この事件を契機に、日テレにおける郵便物のチェックは厳重化。空港にあるようなセンサーに通すなど、何重にも渡って確認作業を行うようになったといいます。タレントとそれに関わるスタッフたちが安心して仕事に取り組めるよう、今後も彼らをサポートする機関は警戒を強めて欲しいものです。

(こじへい)

※イメージ画像はamazonより安達祐実写真集「続・私生活」 Kindle版
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