「テレビを見るときは部屋を明るくして離れてみてね」

子供向けのテレビアニメ冒頭でよく見るこのテロップ。表示されるようになったのは、1997年以降のこと。
それ以前は存在しませんでした。
登場するきっかけとなったのは、1997年12月16日にテレビ東京で放送されたアニメ『ポケットモンスター』での出来事。いわゆる「ポケモンショック」と呼ばれる事件により、上記の注意勧告は半ば必須となったのです。

社会現象になったポケットモンスター


1996年に第一作目となる「赤」と「緑」が発売されて以来、日本はおろか世界的人気ゲームとなっているポケットモンスターシリーズ。累計販売本数は2億6000万本以上。玩具、カードゲームなどを含めた市場全体の総売上額は累計で4兆円超という、ドル箱コンテンツなのはご存知の通りです。

特に、第一作目発売時の反響は凄まじいものでした。当時の子供たちにとって通信ケーブルと「赤」or「緑」のカートリッジ挿入済みゲームボーイは必携品。それはゲットしたポケモンを友人間で交換するためであり、あの頃は、誰もが151体コンプリートの「ポケモンマスター」を目指していたのです。
また、「ピカチュウ カイリュー ヤドラン ピジョン…」と、ひたすらリズムに乗せてポケモンの名前を羅列していくCD『ポケモン言えるかな?』もゲームと共に大ブレイク。この歌をどれだけ詰まらずに歌唱できるかが、小学校内でのステータスとなっていたため、皆、経文のように唱えて暗記していました。

アニメは高視聴率連発! それゆえに被害が拡大する事態に


そんな社会現象真っ只中のポケモンが、テレビアニメとして見られる……。それだけで、当時の子供たちを熱狂させるのには十分でした。
かくして、アニメポケットモンスターは放送開始当初から、大人気に。
ポケモンマスターを目指す少年・サトシと彼の相棒・ピカチュウの冒険活劇は、ゲームの世界観を忠実に再現しつつ、ポケモンというコンテンツそのものの魅力をさらに向上させる役目も果たし、結果として高視聴率を連発したのです。

前述の事件が発生した第38話『でんのうせんしポリゴン』も、関東地区では16.5%、関西地区では10.4%の高視聴率をマーク。人気番組ゆえ、多くの子供たちが“問題のシーン”を目撃したために、被害が拡大してしまったのは、何とも皮肉なことです。

赤と青の激しい光の点滅が子供たちの目に……


この回は、サトシとピカチュウ一行が、コンピュータ内で起きている事件を解決しようと、コンピュータ内部に入り込むというストーリーになっていました。
そこで電脳世界を表現するために、「パカパカ」と呼ばれる技法をはじめとする、ストロボやフラッシングなどの点滅エフェクトを多用。特に番組後半においては連続使用が目立つようになり、ピカチュウの攻撃「10まんボルト」がワクチンソフトに直撃したシーンでは、赤と青の光が交互に激しく点滅。

これによって、子供を中心とした視聴者が光過敏性発作による、頭痛や吐き気などを訴えて病院へ搬送され、135人が入院する事態に。最終的な患者数は750人にのぼったといいます。

事件の影響で二度と登場しなくなった、悲劇のポケモン・ポリゴン


この事故は当然、マスコミで大々的に報じられました。とある全国紙においては、ピカチュウが電撃を発する写真と共に「ピカチュウ 子供たちを襲う」という見出しを掲載。被害が起こった原因を追求することなく、単にポケモンをバッシングしたい内容のニュースも飛び交うという、カオスな状態がしばらく続きます。
こうした騒ぎと、なにより実害が出た事態を重く見たテレ東側は、『ポケモン』の放送自粛を発表。約4ヶ月もの間、休止を余儀なくされたのでした。


1998年4月16日の放送再開後は大きな事故もなく、2016年現在も続く長寿アニメとなったポケモンですが、可哀想なのは、38話のメインキャラとなったポリゴン。
別名「ポリゴンショック」と呼ばれた事件の風評被害の影響もあり、騒動以降、一度もアニメに登場していないのです。もう原因も解明され、対策も十分に練られている今、赦されても良いと思うのですが果たして……。
(こじへい)

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