脚本:西田征史 演出:岡田健

イラスト/小西りえこ
「これが滝子(大地真央)の姿を見た最後となりました。」(檀ふみ)
青柳商店の人々もこれで退場。
時代は戦争まっしぐらで、寂しくなってきた「とと姉ちゃん」。
自分の命が長くないと悟った滝子は引き際を考え、店をたたみ、木曽に移ることにする。
店を無理に維持するよりも、仕事に対する誇りを大切にした滝子は立派だ。
そんな彼女についていくという清(大野拓朗)と隈井(片岡鶴太郎)に滝子は「最後に、ひと芝居つきあってくれないか」ともちかける。
目黒のいい借家を常子たちに紹介する滝子。芝居とは、いっとき店を軍に貸すだけ、戦争が終わったら戻ってくるからまた一緒に暮らそうということで、清たちはニコニコ笑って肯定するのが重要な使命。
だが、その時、常子はなんとなく芝居に気づいているような顔をしている。
別れの日、美子(杉咲花)が滝子の浴衣を「今度お会いする時に仕上げます」と言うが、渡されることはなかったのかと思うと悲しい。
できた浴衣を渡してしまうよりも、果たされなかった約束にしたほうが、悲しみは深くなる。
美子はほんとうに滝子の芝居にだまされたのか、それともだまされたふりをしたのか。浴衣を完成させなかったのは再会の祈りだったのかもしれない。
こんな時に「さようなら」と軽い調子で言う清。
しばしの奇妙な間が、芝居のヘタさ(大野のではない、清の)を強調する。
みんながあまり語らない中、滝子の言葉が響く。
「木材っていうのはいまうえたものじゃない。40年50年植えたものが育って商品になる。だから植たときは自分の利益にならないのさ。それでも40年後に生きる人のことを思って植えるんだ。次に生きる人のことを考えて暮らしていくんだ。」
深川で出会った武蔵(坂口健太郎)、森田屋、青柳商店・・・みんなみんないなくなって・・・。中で最も力が入ってたのは、武蔵との別れだったなあ・・・。
そして常子たちも深川を去って、4回目の引っ越しで目黒に。
「また4人に戻ったのね」と鞠子(相楽樹)がしんみり。
だが希望があるどころか、次週予告では戦争まっしぐら。
さて、「とと姉ちゃん」では戦争をどう描くのか。
(木俣冬)