毎週続けてきた『ヒロアカ』レビューも今日で最終回。
では、あらためてアニメ『ヒロアカ』第1期について振り返ってみたい。筆者が強く感じたのは主に2つのポイントだ。そして、この2つが『ヒロアカ』人気を支えているものだと考えている。

『ヒロアカ』は縦軸と横軸がそれぞれとても太い
『ヒロアカ』のぶっとい縦軸といえば、主人公・緑谷出久(通称デク/演:山下大輝)とNo.1ヒーロー、オールマイト(演:三宅健太)の師弟コンビによる成長物語だ。
第1期で言えば、1話から4話は、ほとんど2人の話である。1話ではデクとオールマイトの出会い、2話ではオールマイトの重要なセリフ「君は、ヒーローになれる」があった。3話ではマンツーマンの特訓、4話でようやく雄英高校の入試である。そういえば、最初の頃のデクは泣き虫だったなぁ。
2人は学園ものの教師と生徒というより、やはり師弟と言ったほうがしっくりくる。
原作者の堀越耕平は、師弟関係や人間関係を描く際、『スター・ウォーズ』シリーズから大きな影響を受けたとインタビューで語っている。なるほど、とりわけプリクエル(新三部作)は、オビ=ワン・ケノービとアナキン・スカイウォーカーの師弟物語だった。
アニメの長崎健司監督は、ドラマーを目指す若者と音楽学校の異常に厳しい先生の死闘(?)を描いた映画『セッション』の名を挙げている。師弟が「夢に呪われている」感じが、オールマイトとデクの関係とどことなく重なるのだという。
デクとオールマイトのかなり濃い関係を縦軸とすると、横軸になるのがデクと1-Aのクラスメイトたちとの関係だ。特に、幼馴染でライバルの爆豪勝己(演:岡本信彦)との愛憎入り乱れた関係は、長い時間熟成されてきた分だけ非常に濃い。爆豪はそもそも「デク」という呼び名の名づけ親でもある。
第1期の中盤である6話、7話、8話では、デクと爆豪の関係をじっくり描いている。「クソナード」「石っコロ」と完全にデクのことを見下していた爆豪が戦闘訓練で敗北し、爆豪自身がワンステップ上がっていくというストーリーだった。今は少し落ち着いたかのように見える爆豪とデクの関係だが、この後も目が離せない。
さらに、デクと親交を深める麗日お茶子(うららか・おちゃこ/演:佐倉綾音)と飯田天哉(演:石川界人)の“緑茶飯”トリオのことも忘れちゃいけない。最終回、ラスト近くで学校から出てくるデクを日が暮れるまで待っていた2人の姿にグッと来た視聴者も多かったはずだ。
キャラクターをとても大事にする『ヒロアカ』
『ヒロアカ』は学園ものであり、ヒーローものでもあるので、登場人物が非常に多い。
デクが通う雄英高校1-Aクラスだけで、ヒーロー候補生が20人もいる。
とはいえ、『ヒロアカ』は群像劇というわけではない。デク×オールマイトの縦軸、デク×爆豪の横軸、さらに敵(ヴィラン)の襲撃というメインの物語がしっかりある。それでいて、20人のクラスメイトをモブ扱いせず、とても大事に描いているのだ。
10話から13話の敵連合襲撃編でも、クラスメイトたちの活躍は尺こそ短いがしっかり描かれている。13話では1-Aを救援に来たプロヒーローの教師たちの活躍も原作以上に描かれており、ファンたちを喜ばせた。
敵相手にブチ切れた攻撃をかますプレゼント・マイク(演:吉野裕行)の背後に、生徒を守るためにボロボロになるまで戦った同期のイレイザーヘッドこと相澤消太(演:諏訪部順一)の姿が写っていたが、2人の関係性を想像させるにはこれで十分だったりするのだ。
また、これはマンガとアニメ(テレビ)の違いだが、原作では小さなコマでこそっと描かれていたクラスメイトたちのやりとりが、アニメでは他のシーンと同様に大きな画面で行われており、視聴者の目を惹きやすくなった。
敵連合との戦いが終わった後、相澤先生の容態を心配する蛙吹 梅雨(あすい・つゆ/演:悠木碧)の姿や、尾白猿夫(おじろ・ましらお/三好晃祐)と葉隠透(はがくれ・とおる/演:名塚佳織)のちょっとした会話が嬉しかったりするのだ。
キャラクターを大切にする『ヒロアカ』を象徴しているのが、最終回のラスト間際でオールマイトが「このクラスは強い。強いヒーローになるぞ」と言った後、1-Aのクラス全員が一人ずつ映し出されるシーンである。なかにはまだ活躍どころか一言も喋っていないキャラクターもいるが(口田くんとか)、ちゃんと一人ずつ映してくれるのがうれしい。
というわけで、アメコミ映画×『ジャンプ』の王道ヒーローものという解説だけでは収まりきらない『ヒロアカ』のストロングポイントを解説させていただいた。デクの成長物語とバトルでグイグイ引っ張りながら、キャラクターたちへの行き届いた愛情が、視聴者たちの豊かな想像力を育んでいるのだと思う。
さて、番組のラストで第2期の製作が発表されて嬉しいのだが、今度はどの時間帯で放映されるのかが気になるところ。雄英体育祭とステイン編は間違いなくやるとして、何クール放映されるのかも大変気になる。気になることが山積みである。
とりあえず再び会えるそのときまで。それではご唱和ください。さらに向こうへ、「Plus Ultra!」。
(大山くまお)