当時、アカデミー賞には長編アニメに関する賞がなく、傑作である『美女と野獣』をスルーするわけにはいかぬ! と作品賞候補に入れたのかもしれない。
『美女と野獣』は新しいディズニー
同作は、前年度に話題を振りまいたディズニーアニメ『リトル・マーメイド』の結末がフェミニズム団体の批判を浴びたのを受けて、ベルを現代的で行動的な女性として描いている。
彼女はただ王子様が迎えに来てくれるのを待つ、あるいは守ってくれることを信じるような従来のディズニープリンセスとは違う。自ら野獣の屋敷に出向き、父の身代わりになる決心をし、ひねくれた野獣と対等に接するのだ。
役者は否定的だった!? アニメの作品賞受賞
そういった従来のディズニーアニメからの変化も多くの人に受け入れられたのだが、さすがにアカデミー賞作品賞候補になると雲行きが変わった。役者の一部は「アニメが作品賞に入ってしまったら、役者の出る幕がない」と批判的な声もあったのだ。
確かに作品賞受賞作に出演したことは、役者にとっては名誉なことだから、アニメーションである『美女と野獣』が作品賞を受賞することはおもしろくない。また、アニメの世界観と、数々の限られた条件の中でフィクションの世界を構築する実写映画を比べるのはおかしいというわけだ。
「長編アニメ賞」が設立されたアカデミー賞
しかしこれ以降も、一般的にはディズニーの天下だと思われていたアニメ映画の世界に、宮崎駿監督のジブリやドリームワークス、アードマン、ワーナーなど多数のアニメーションスタジオが良作を次々とリリース。それらが興行的に成功を収めるようになってきて、さすがのアカデミー賞も放ってはおけなかった。
たびたび作品賞候補にアニメ作品が入るのも避けたいし、作品数が多いのだから、優秀なアニメに賞を与えるのもありだと考えてもおかしくない。2001年から長編アニメ映画賞がスタートしたのには、そういった背景があったのではないだろうか。つまり世界的なアニメ人気が、最終的に長編アニメ賞の設立の背中を押したのだ。
おそらく役者たちも胸をなでおろしただろう。
(れおなるど)
※イメージ画像はamazonより美女と野獣 オリジナル・サウンドトラック Soundtrack