「あさイチ」(NHK)で朝の顔になり、主婦層の人気をガッツリ掴んだイノッチのこと井ノ原快彦。
しかし、V6として1995年にデビューしたときは、森田剛、三宅健、岡田准一のComing Centuryは若いアイドル枠、井ノ原、坂本昌行、長野博の20th Centuryはジャニーズのベテラン枠といった印象。

人気の点でも牽引していたのはComing Century(カミセン)で、20th Century(トニセン)は坂本がリードボーカルとしてグループを支えていたものの、華やかなアイドル人気があったカミセンに比べて地味さは否めなかった。

個人活動で売れていくV6メンバー


やがてV6のバックで踊っていたジュニアの中から嵐が結成され、その後、数々のグループが続々デビューしていく中、V6の人気は嵐などに食われていった。
またSMAPで木村拓哉がブレイクしてから、ジャニーズのアイドルはグループでもバラ売りをして、個人の人気を確立することでグループの価値も上げていくことが当たり前になり、V6もそれにならって個々の活動も重要視されていく。個人活動でまず売れたのは岡田准一。数々のドラマや映画で結果を残し、V6の中でも役者としてはいちばん売れっ子に成長していく。

井ノ原快彦は二枚目ではなく三枚目?


一方の井ノ原は、90年代、タレントパワーもそれほどなく、全国区で顔が知られた存在ではなかった。しかし彼は個性を磨いていく。それはV6の「カッコいい井ノ原」ではなく、「面白い井ノ原」というポジションだ。
本人は無意識かもしれないが、彼は実に多彩であり、アイドルの枠の中で様々な挑戦をしていたのだ。

90年代に出演したドラマ『コーチ』では主演の玉置浩二と出逢い、玉置と仲良くなったことがきっかけで、V6のヒット曲『愛なんだ』(1997年)を生むきっかけを作った。
その後も、嵐の5人が主演した映画『ピカ☆ンチ LIFE IS HARDだけどHAPPY』の原案(この映画は、団地育ちの井ノ原の青春時代のエピソードをベースにした物語)、また、雑誌連載をまとめた「アイドル武者修行」(日経BP)「イノなき」(角川書店)のリリースなど。
アイドル本の中でも彼の書籍は異彩を放っている。アイドル的なポートレート本ではなく、しっかり読ませる内容でありながら、文化人ぶった気取りはなく、親しみやすい井ノ原の個性が表われているのだ。

結婚以降も人気に陰りが見えない井ノ原快彦


95年にV6としてメジャーデビューしてから、コツコツとこういった活動で井ノ原快彦の個性を築き上げつつ、交友関係を広げていき、認められる存在になっていった。

だからジャニーズのタブーと言われる結婚をしても、彼の人気に陰りが見えることはなかったのだ。それどころか、NHK「あさイチ」に抜擢されたのは、彼が瀬戸朝香と結婚し、父となったことも大きいだろう。ターゲットの主婦層にとって親近感が増し、共感を得られやすいからだ。

ジャニーズで結婚し、父親になって仕事を増やすというのはかなり珍しいこと。そういう意味では画期的であり、ジャニーズで息の長いタレントになるには、目指すべきは井ノ原快彦といってもいいかもしれない。
(れおなるど)
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