原作をなぞりつつ、ところどころオリジナル感を出そうとする姿勢は個人的に嫌いではない。ドラゴンボールを参考にした別物だと思って見ると、大変面白いB級映画とも言えよう。
原作からは想像できない凶悪キャラ
この物語は原作でいうところの、悟空がブルマと出会って最初にドラゴンボールを揃えて神龍を呼び出し願いを叶えてもらうところまでが描かれている。世界征服を企むピラフ一味とのドラゴンボール争奪戦の末、ウーロンの「ギャルのパンティをおくれ!」という願いが叶えられたところくらいまでの話だ。
ピラフ一味といえば、ピラフ大王、シュウ(犬)、マイ(女)いずれも可愛らしい見た目から、どう頑張っても世界征服なんてできなさそうなほのぼのとした雰囲気が特徴の3人トリオだ。
しかし、台湾映画の彼らは一味違った。シュウは全盛期のシュワルツネッガーのような筋肉マンでもはや犬ですらなかったし、マイは冷徹非情な機械のような女だった。彼らのボス、ピラフにいたっては映画「アバター」を極悪人ヅラにしたような見た目だ。そして、彼らとのバトルシーンは特撮ヒーローも顔負けの大量の火薬が使用されたド派手なものだった。
悟空が主人公だと思っていたら…
ドラゴンボールの主人公は誰がなんと言っても孫悟空だ。もちろん、この映画でも悟空が主役なはずだった、少なくとも物語の中盤までは。しかし中盤を過ぎたころに亀仙人が登場して以降、悟空が主役という雰囲気は一切なくなってしまった。
亀仙人は台湾版ドラゴンボールの中で最も再現度が高かった。
先述したバトルシーンでも主役のはずの悟空が前座だった。美味しいところはすべて亀仙人が持っていってしまったのだ。原作からは想像することのできないほど凶悪なピラフ大王が放つ光線に、かめはめ波のような技を放って応戦する亀仙人はヒーローそのもの。悟空はその周りを如意棒片手にチョロチョロしていることしかできなかった。白熱の光線合戦を制してピラフ大王を倒したのはもちろん亀仙人。この映画において、ヤムチャ以上の噛ませ犬となってしまった悟空には同情する以外ない。
題材がドラゴンボールだからといってドラゴンボールとして見てはいけない。とはいえ、まったくの別物として見ると味わい深い映画だった。
(空閑叉京/HEW)