永六輔さんの本はたくさんある。
『大往生』が大ヒットした。

職人の言葉を集めた『職人』もいい。
『庭説法-歌えばお経 話せば法話』もたのしい。
でも、今回は『悪党諸君』をオススメしよう。
爆笑!永六輔が刑務所で受刑者に話したこと
『悪党諸君』永六輔/幻冬舎文庫

これは永六輔が刑務所で受刑者に話しているのをまとめた本。
「刑務所慰問講演集」だ。

女子刑務所で、
「今日、ここに、こうやって皆さんに集まっていただいて、……集まったわけじゃないか(笑)。いやいや集められて(笑)」
と切り出す。

話してる内容も、「男の乳首はなんの役に立つのか」から、「生命の進化」へ、「こんにちは赤ちゃん」の話題になって、「年を取る、寿命」の話に。
縦横無尽、笑いがたえない。
そして、「すばらしい体を持って、子供たちに、歴史を、文化を残していくという、すてきな仕事をまだまだゆっくりやれますから、どうぞ、あせらないでゆっくりと生きてください。いいですね、女性は長寿なんですから」としめる。

沖縄刑務所では、“この刑務所ではきれいな海を見下ろす丘の上に建ってるから、風通しがいいだろうと思ってきたら、風がない、高い塀で囲まれているので(爆笑)”

京都刑務所では、話す時間が四十五分しかないということで“たった四十五分だけれどもこれから一緒に時を過ごす、短いけれども一緒に暮らすわけですからね。えー、もちろん、皆さんはこれからもずぅーっとここで暮らすんでしょうけれども(爆笑)。”
刑務所ならではの冗談でつかむ。

本書には4つの刑務所での話が採録されている。
どれも笑いに満ちた語りだ。
“普段から、楽しいことが好き、どんなに辛くても、笑えるってところがあってほしい。”
笠松刑務所で永さんが語る「黒柳徹子の人間ドックでの失敗談」が大爆笑絶品なので、『悪党諸君』ぜひ読んでみてください。

永さん、ありがとうございました。(米光一成

「永六輔号泣、震災とラジオ」
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