韓国は釜山(プサン)の街を歩いていたところ、「対馬バーガー」と書いてあるお店と遭遇し、思わず二度見した。
対馬とはやはり、九州本土よりも朝鮮半島のほうが近く、韓国人観光客が多く訪れる長崎県の島、対馬のことだろう。
ホテルに戻って検索すると、「対馬バーガー」とは対馬にあるハンバーガー店「KiYo」が販売する、対馬ならではの食材(イカとヒジキ)を使った人気のハンバーガーで、ご当地メニューとしても広く知られているとか。
記者が釜山で出会ったお店は、「Chinguya & KiYo」という店名を掲げており、対馬のハンバーガー店と関係があるのだろう。しかしなぜ韓国? そして韓国の人の反応は? 気になるところを取材した。
B級どころじゃない本格バーガー
まずは対馬バーガーを食べてみないと始まらない。釜山のChinguya & KiYoを再訪し、商品を注文。ファーストフードのようにすぐには現れず、厨房からパティを焼く香ばしい匂いが漂ってきた。これだけでも期待が高まる。
やがてやってきた、ボリューム感あるハンバーガーをがぶり。これはうまい! 肉汁あふれるビーフのパティの中にはヒジキが混ざっており、ほのかなアクセントを追加。そして肉の上には、ぷりぷりした食感が楽しいイカの足がゴロゴロ。それらをバランスよくまとめあげる特製ソースもなかなかだ。
対馬バーガーと聞いて、もっとB級感あふれるメニューを想像していたのだが、いやはや王道のおいしさである。
対馬バーガーが食べられるのは、対馬と釜山だけ
釜山のChinguya & KiYoがオープンしたのは2015年11月。やはり対馬の「KiYo」の支店といえる存在だが、対馬バーガーのお店は日本には対馬以外になく、何と釜山だけなのだそう。その不思議な経緯を、釜山店のスタッフにお聞きした。
まず、キヨさんこと新庄清孝さんが、対馬の厳原で「対馬バーガーKiYo」を2009年に開業。その後、お店の隣に、韓国人事業家のキム・インテさんが「Chinguya」という名の旅行者向けのカフェバーをオープンした。ちなみに「チング」とは、韓国語でも長崎の方言でも「友達」という意味をもつ。
お隣さんという関係から意気投合したふたりは、対馬の比田勝に2014年3月「Chinguya & KiYo」を開き、対馬バーガーは食べられるのはもちろん、コーヒーもお酒も楽しめ、旅情報が集まるお店とした。その初の島外支店が、キヨさんから対馬バーガーの作り方を教わったキムさんが経営する、この釜山店というわけだ。
対馬で食べられなかったら釜山へ
韓国の人たちは、短時間で行ける外国として、キャンプや釣り、そして免税店でのショッピングを楽しみに対馬へ出かけるそうだが、その中でも対馬バーガーは、「対馬で絶対食べたいもの」として、SNSを通して知名度が高いのだという。
しかし対馬では売り切れになることもあり、そんな時、釜山のお店が役に立つ。釜山には対馬航路のフェリーターミナルがあるのだが、対馬で対馬バーガーを食べられなかった人が、釜山のお店に立ち寄るのだとか。もちろん対馬旅行を思い出して食べに来る人も多い。
さらにおもしろいのが、釜山の「Chinguya & KiYo」が、対馬の情報発信地になっているということだ。店内には対馬の観光パンフレットや情報誌が配置され、車やキャンプ用品などのレンタル情報も。対馬旅行を前にここに寄るお客さんも多い。
まさに日韓交流を実践するお店「Chinguya & KiYo」。ここで絶品の対馬バーガーを食べる時は、日韓の距離の近さを感じながら味わいたい。
取材協力
Chinguya & KiYo 釜山市東区中央大路196番キル12-8 Tel. 051-988-0778