(日曜よる10時30分/日本テレビ/脚本:秦建日子 演出:佐藤東弥 出演:藤原竜也 玉山鉄二 二階堂ふみ 伊野尾慧(Hey! Say! JUMP)ほか)

ポニーキャニオン
初回で主人公を演じる藤原竜也さんが「え」と発したのは17回。「へ」が1回。
藤原さん演じる藤堂新一は、ある日突然、ほかの人物(婦女暴行犯)に名まえとパーソナルナンバーを奪われ、社会的に存在しないことになってしまいました。弱り目にたたり目、研究開発していたデータを消去するシステム「ミス・イレイズ」の誤作動によって、自分が存在する証拠すら失ってしまうのです。
なぜ彼はこんなことに? という謎が物語の骨子。1話の最後に、藤堂が頼りにしていた大学時代の友人・小山内(玉山鉄二)がいきなり何か企んでいる素振りをしていたり、行きつけのバーのバーテンダー日下(伊野尾慧)が藤堂の飲んだコップをジップロックに入れたりしてあやしさを振りまき、どうやら何者かが藤堂を陥れようとしているらしいことがわかります。ですが、2話ではもはや誰が犯人かは問題ではありません。なぜならみんなあやしい気配ではなく、あやしさ確定になってしまい、そのうえ、藤堂を追いつめる人は増えるばかり。
藤堂の元恋人らしいはるか(ミムラ)は、ニコニコと藤堂の婚約者早苗(二階堂ふみ)に接近し、斉藤(今野浩喜)はバーテンダーからコップとお金を受け取り、会社の後輩・五木志尊淳は、早苗と関係があるらしく・・・。
八方ふさがりの藤堂は、フジテレビの「逃走中」みたいに、黒ずくめの男たちに追い回されて街を全力疾走。結局捕まってしまい、拳銃向けてきた相手はなんと公安。
伊坂幸太郎の「ゴールデンスランバー」をやや彷彿とさせる緊張感みなぎり疾走感あふれるドラマですが、
演出の佐藤東弥の世代だと、ヒッチコックの「逃走迷路」などを意識しているのではないでしょうか。
藤原竜也さんの魅力は、その必死感もさることながら、二階堂ふみに「あ・な・た[ハート]」と甘えられても心ここにあらず感だったり、“ガキの使い”と名乗る人物の誘導で上原動物園に来て、牧歌的な雰囲気と自分の置かれた状況のギャップに「バカかおれは」と呆然としたり、なぜか動物園にお母さん(黒木瞳)がいたり、そんな状況に「とにかく落ち着けおれ」と自分を励ましたりして、この一連の緊張と緩和のリズムが実にエンターテインメントしているのです。
最後はクリープハイプの主題歌「鬼」の「ああもうつかれたよつかれたよつかれたよ」「わかってないわかってないわかってない」「おれだよ、あれ、コレ誰?」と主人公の叫びのような歌詞がかぶさって・・・主題歌とドラマが見事に連動しています。「鬼」としてみんなから排除されてしまった可哀想な主人公を3話でも応援したい!
(木俣冬)