今ではすっかり聞かなくなった「韓流」という言葉。一時期は、ドラマに映画に音楽にと、「韓国発のもの」というだけで有難がられていましたが、そんな時代も今は昔。
ある時期を境に、一部メディアが捏造した流行なのでは? などとネット上で叩かれた挙句、いつの間にかブーム自体が沈静化していました。

噂で語られているように、どこかのテレビ局が私服を肥やした見返りとして、韓国のプロパガンダを仕掛けたかどうかは定かではありません。けれども、そんな政治的意図とは関係なく、隣国のコンテンツにハマった日本人が多数いたのは事実。特に韓流の先駆けとなったドラマ『冬のソナタ』は日本中の主婦を虜にし、空前のブームを巻き起こしました。
冬のソナタが放送されたのは、今から13年前の2003年。当初は、NHKのBS2で放送されていたのですが、あまりの反響から急遽地上波で放送することに。一躍、その名を全国に知られることとなったのです。

ご都合主義でベタベタな展開だった『冬のソナタ』


そもそもこの『冬ソナ』、どんな話なのかというと筋立てとしてはいたって単純です。
ヒロインが高校生の時、片思いの男子生徒が突然交通事故で死ぬ→大人になったヒロインは幼馴染と婚約→そこにタイミング悪く、亡くなった片思いの彼に瓜二つの男性が登場→ヒロイン揺れる……。かつてフジテレビで放送していた昼ドラを思わせる、ベタベタかつご都合主義なプロットではないでしょうか。
しかし、それこそが全国の主婦に受け入れられた理由の一つといえます。オバサマはいつの時代も、昼ドラ的な単純明快なメロドラマに熱中するわけで、そういった意味でド直球な恋愛モノである冬ソナが主婦層に刺さったのは必然だったのです。

ペ・ヨンジュンはディーン・フジオカに似てる?


もう一つブームの要因として挙げたいのは、やはりペ・ヨンジュンです。死んだ男子生徒とその彼と瓜二つな男性、一人二役に挑んだヨン様は、微笑みの貴公子と呼ばれ、オバサマたちのハートを鷲づかみにしました。

彼のルックスといえば、胡散臭さと紙一重のニヤケ気味なしょうゆ顔。顔の造形的には全く違いますが、ニュアンスとしては何となくディーン・フジオカを想起させる当たり、主婦層が好む男性のタイプには時代を超えた一貫性があるのかも知れません。

2000年代前半に起こった“純愛ブーム”が追い風に


そんなこんなで当たりに当たった冬ソナですが、この背景には、当時、純愛をテーマにした文学・映画・テレビドラマがことごとくヒットした「純愛ブーム」の流れがあります。
小説『世界の中心で、愛をさけぶ』『いま、会いにゆきます』、ケータイ小説『恋空』『赤い糸』、インターネット掲示板をもとに構成された『電車男』……。
様々なコンテンツが話題を呼び、次々と映画・ドラマ化されていったのが、2000年代前半という時代です。その様はインターネットの発達及び普及により、人と人とがデジタルで繋がれるようになったことへの反作用のようでもありました。

上記の作品群がどちらかというと、10~20代をメインターゲットとしていた中で、30代のヨン様を主役に据えた冬ソナは、明らかにそれより上の年代を狙ったドラマ。そういった意味では上手く棲み分けができており、オバサマ向け純愛モノという分野でほとんど独占状態を築けたことも社会現象となった原因と言えるでしょう。

その後も、ロケ地を巡るツアーが旅行会社で組まれたり、アニメ化したり、CRぱちんこ冬のソナタが登場したりと、しばらく日本で続いた冬ソナブーム。純愛ブームの代表作にして韓流ブームの先駆け的コンテンツとして、今後も語り継がれていくことでしょう。
(こじへい)


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