「目が悪くなるからダメ」なんていう親からの無慈悲な一言とともにゲームボーイを買ってもらえなかった少年少女は多かったことだろう。ファミコン、スーパーファミコンは買ってもらえたのに、携帯ゲーム機であるゲームボーイだけは断固拒否の姿勢を貫き通した親の、なんと多かっただろうか。
かくいう筆者も携帯ゲーム機はダメという家庭で育った。親がダメなら祖父母だ!とねだるも、すでに母親から釘を刺されていた祖父母にも買ってもらえず、結局ゲームボーイを手にすることができなかった悲しき過去を持つ。
携帯ゲーム機じゃないならいいでしょ!という姿勢
確かに親の言い分もまったくわからないでもない。しかし、Nintendo DSが子どもたちの人気を獲得し、みんなで公園に集まってDSを遊んでいる光景を見ると、複雑な心境になってしまう。筆者が子どもの頃に公園に集まってみんなでゲームボーイして遊んでいる構図とまったく同じであり、ゲームボーイを持たざる者は持つ者たちの輪に入ることができず、後ろから覗き込むようにプレイ画面を眺めるというなんとも退屈な時間を過ごしたのである。もちろん学校でも、ゲームボーイの話題のときだけは蚊帳の外。
そんな持たざる者が苦々しさを感じていた頃、『スーパーゲームボーイ』というスーパーファミコン用神カセットが誕生した。なんと、スーパーファミコンでゲームボーイソフトが遊べるという互換機である。しかもカラーで! ここに、ゲームボーイを買ってもらえない理由は解消された。嬉々として小生はゲームボーイプレイヤーの仲間入りを果たせたのだった。
ゲームボーイソフトは随分と安価で販売されていたこともあり、スーパーファミコンソフトを1本ねだるところをゲームボーイソフトなら2本おねだりできたというメリットも付記しておこう。今更ながらスーパーゲームボーイに感謝の意を伝えたい。
カラーが当たり前になってしまった結果
『スーパーゲームボーイ』が発売されてから2年後の96年、同カセットの動作が改善された『スーパーゲームボーイ2』が発売された。
『ゲームボーイカラー』の登場は、スーパーファミコンで遊べる『スーパーゲームボーイ』『スーパーゲームボーイ2』の存在意義を希薄にした。カラー専用ソフトが発売された上、『ゲームボーイカラー』でもカラー非対応のソフトがカラーで遊べたのだ。逆に、カラー専用ソフトは『スーパーゲームボーイ』シリーズでは非対応で起動できない。『スーパーゲームボーイ』が歴史的使命を終えた瞬間だった。
『ゲームボーイカラー』が登場した頃には筆者は高校生になっていた。授業中にこっそり隠れて、『スーパーゲームボーイ』を中古ショップに売ったお金で買ったゲームソフトをカラーで遊んでいた。
(空閑叉京/HEW)