「お前を消す方法」邪魔でしょうがなかったイルカのカイル君
『お前を消す方法』画像はAmazonより

Windows 95の登場で、多くの会社や家庭にパソコンが普及した。Word、Excelといったオフィスソフトの利用も同様に広がり、ものすごい速さでそれまで利用されてきたワープロソフトや表計算ソフトに取って代わった。
マイクロソフトオフィスは大変便利なソフトだったにも関わらず、1つだけ多くの人々にとって邪魔な存在がいた。

消えない…イルカ


マイクロソフトオフィス97は画期的なオフィスソフトだったが、初めて触る初心者ユーザーも多かった。そんなユーザーのわからないことを解決するために、同ソフトにはサポートキャラが存在していた。それが、ソフトを起動すると「キュー!」という鳴き声とともに姿を現すイルカだ。名を『カイル君』という。

WordやExcelで作業中に、なにか不明点や疑問に感じたことがあったとき、用意された吹き出しに質問内容を入力すればカイル君が解決してくれる。しかし、残念なことにカイル君の疑問解決能力は、近年のAIサービスなどとは比べるべくもなかった。
的を得た回答をしてくれることがほとんどなかったのだ。いや、まったくなかった。質問してもいまいちよくわからない…、問題が解決しない…、その事実に続々と気づいていく人々。その仕事ぶりだけは非常に真面目なものだったが、いつしかカイル君はただただ鬱陶しい存在に成り下がってしまっていった。

さらにタチが悪いことに、邪魔なカイル君を消す方法がなかった。インターネットが普及し始めた頃には、カイル君に対する質問用の吹き出しに「お前を消す方法」と質問するネタ画像をアップする人まで現れ始めた。
皆本当に消したくて消したくて仕方がなかったのだろう。

最新オフィスではティラノサウルスが暴れる!


その後、カイル君のほかにもロボットやネコ、イヌなど、アシスタントキャラはたくさん登場したが、Windows XP以降では標準では表示されないよう設定された。さらにマイクロソフトオフィス2007の登場で、アシスタント機能は完全に姿を消した。少々遅い気こそしたが賢明な判断だったことには間違いない。

現在最新のオフィス365では、WordとPowerPointにおいて3Dモデルのアニメーションを挿入する機能が搭載された。ティラノサウルスや犬、サメなどが文書内を自由に動き回る様は、まるでいつかのカイル君が甦ったかのような錯覚を受ける。


サポートキャラとしては絶望的なほど不人気だったカイル君だが、この機能であればきっと多くのユーザーがカイル君を温かく迎え入れてくれるのではないだろうか。皆に「おかえり」といってカイル君を迎え入れて欲しいものである。

(空閑叉京/HEW)