ストリートファイターII’(ダッシュ)にはその昔、レインボーと名付けられた海賊版が存在した
画像は正規版(Amazonより

91年に『ストリートファイターII』が大ヒットして格闘ゲームが大きく盛り上がった翌年、『ストリートファイターII’(ダッシュ)』が登場した。『ストリートファイターII’』では、それまでコンピュータ専用だったバイソン、バルログ、サガット、ベガの四天王が自キャラとして使用可能となったことで、ストII人気はさらに大きなものとなっていった。


ストII’には海賊版が存在した


大きな反響とともに歓迎された『ストリートファイターII’』だが、その反響からか一方でアーケードには海賊版と呼ばれるものも存在していた。タイトル画面の文字が虹色であったことから「ストリートファイターII’ レインボー」なんていう呼ばれ方だったり、「スペシャル」や「ハイパー」という呼ばれ方もされていたようだ。ちなみに、筆者がいた地域ではなぜか「アメリカ版」と呼ばれていた。

驚愕! 海賊版のとんでも仕様


文字がレインボーカラーである以外、見た目はなんの変哲もない『ストリートファイターII’』そのものだった海賊版。しかし内容にはとてつもない違いがあった。どんな違いがあるのかというと、まずプレイキャラクターがバトル途中で自由に変更できるという点だ。

例えばキャラセレクト画面でリュウを選択していたとしても、バトルの途中でスタートボタンを押すことで、いつでも使用キャラを変更することができたのだ。

さらに、波動拳など対戦相手に向かって飛ばす技を持たなかった春麗なら百裂脚(百裂キック)で、エドモンド本田なら百列張り手を繰り出している最中に、なぜか波動拳が一緒になって飛んでいた。
ザンギエフのダブルラリアットなんてワキから波動拳が飛び出してきて戦慄した。

また、空中で必殺技を放つことも容易だった。ジャンプ中に昇竜拳を連続で放つと、どんどん上昇していき、画面から完全に消えたと思ったら、今度は画面下から手が出てくるというトンデモ具合。対戦プレイ時などのトレンドは、もっぱら画面外に消えてからが勝負だった。

飛び技を持つキャラ最強伝説


波動拳、ソニックブームといった飛び技を放つキャラは、ハッキリ言って無類の強さを誇っていた。飛び技が連続で放つことができた上、なんと相手がジャンプで避けようとしてもお構いなしにどこまでも追従したのだ。
もはや相手にできることは、ガードして削り倒されるか、コマンド入力をミスするまで同じように飛び技を放ち続ける以外になかった。

なかでも最強の名を欲しいままにしていたのはガイルだ。ソニックブームはタメコマンド式だが、海賊版に限っては最初の1発さえタメて放てばあとはタメ不要で、発射ミスするまでは延々と繰り出すことができたのだ。弱のソニックブームがつながってドーナツを形成していくその様は、プレイヤーたちによって「死のリング」と恐れられていた。

メーカー側としてはこのような海賊版の登場は許しがたいものだったに違いない。しかしそんなことに思いも及ばない小学生のプレイヤー側としては、「まさかこんなことができるなんて夢のようだ」なんてネタ的に楽しめるストレス解消にもってこいのアーケードゲームだった。


(空閑叉京/HEW)