人気者にバッシングは付き物。そして、とかく些細なことがきっかけとなりがちである。

今やお笑い界の重鎮となったダウンタウンにも、そんなバッシングが続いたときがあった。そして、ある大物芸人のパロディコントがその騒動にトドメを刺してしまったのである。

ビートたけしの事故もバッシングの遠因か!?


人気絶頂だったダウンタウンに対するバッシングが始まったのは94年秋頃のこと。当時は、松本が1万円ライブ『寸止め海峡』を開催。異例の高額にも関わらず、チケットは10分で完売となるほどで、その人気は天井知らず。
このライブの1週間後には、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』の企画で、ダウンタウン2人で24時間ぶっ通しのトークにもチャレンジ。さらに松本の著書『遺書』が200万部を超える大ベストセラーになるなど、お笑いのトップを爆進していた時期に当たる。

この夏にはビートたけしがバイクの自損事故(記事はこちら)により、復帰を危ぶまれるほどの重症を負ってしまっていた。それもあって、マスコミは“ポストたけし”の筆頭として、こぞってダウンタウンを取り上げた。
社会現象にまでなった人気者の宿命か、人気に比例する形でバッシングの勢いも大きくなっていったのである。

プライベートの暴露から始まったダウンタウンへのバッシング


まずは、松本の奔放な私生活がターゲットとされた。
「毛ジラミをうつされた」という女性の告白記事が週刊誌をにぎわし、デート現場のスクープ写真も掲載。スキャンダルが連日報道されていく。

続いて、ダウンタウンの「笑いそのもの」もバッシング対象となっていった。

風当たりが強くなってしまった原因とされているのが、『ダウンタウンのごっつええ感じ』で披露されていた人気コント「やすしくん」だ。

大御所をチャカしまくった伝説のコント「やすしくん」とは?


言わずと知れたお笑い界の大御所、横山やすしをモチーフにしたコントである。松本が三角まゆげに黒縁メガネの「やすしくん」に扮し、「正味な話!」「怒るでぇ、しかし!」の口ぐせとともに様々な騒動を起こす。破天荒キャラだったやすしの本質を捉えた絶妙なネタだった。
数々のトラブルから一線を退き、また病気により衰えていたとは言え、やすしはお笑い界の偉人的存在。当初は、その聖域をチャカすのもさすが松本と言ったところだった。

しかし運が悪いことに、慢性の肝硬変を患っていたやすしが亡くなった時間帯に、まさにテレビでは「やすしくん」がオンエアされていたのだ。
しかも前回に放送された内容は、やすしくんがセスナを操縦する中(やすしはセスナを乗り回していた時期があった)、翼やプロペラが外れたりするなどのトラブルが続き、「日本一の漫才師、死ぬ!」と言って飛行機から飛び降りる、というブラックなコント。
もちろん偶然なのだが、あまりにもタイミングが悪かった……。

ダウンタウンの笑いはイジメに繋がる!?


葬儀の席で、やすしの妻や長男の木村一八が松本を批判し、これをマスコミがこぞって取り上げた。
そして、「ダウンタウンの笑いはイジメを助長する」「弱いものイジメで笑いを取っている」などなど、ダウンタウンの笑いに対する批判が“今さらながら”噴出する。
そもそも尖った笑いが売りだったのに、一気に逆風にさらされることに。世間なんてそんなもんである。

結局、「やすしくん」のコントはそのまま終了となっている。

大バッシングを受けたダウンタウンだったが、それをものともせず、さらなるステージに進んだのはご存知の通りだ。
今の時代、このコントを面白いと取るか、悪趣味と取るかは意見の別れるところだろう。
私はもちろん……。
(バーグマン田形)
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