脚本:西田征史 演出:岡田健

常子(高畑充希)が、水田(伊藤淳史)に鞠子(相楽樹)とのことを訊く。
ポワソン・ア・ラ・アメリカンという名まえが覚えにくく、つくるのも大変そうな料理を載せるかどうしようか悩む常子だったが、結局断ることに。料理学校は大激怒。広告を取り下げると言い出す。態度急変、常子の会社を見下す料理学校の経営者たち。あんなたちの思いなんてどうだっていい、女社長に期待してなかった、仕事の邪魔だ、出て行け、と金融資本主義を振りかざす。わかりやすい悪人描写は「とと姉ちゃん」の定番だが、今回は、常子とやりとりしていた人物ではなく、その父親に語らせるという変形パターン。お父さん、この場面のためにこれまでほぼ黙って、でも意味ありげに存在していたのかー。役者も大変である。お父さん役の並樹史朗は、朝ドラナンバー1と言って過言ではない「おしん」(83年)に出ていた。
朝ドラでインパクトのある役を演じると、30年以上経っても記憶に残る。すごいことだ。「とと姉ちゃん」は30年後、誰が記憶に残っているだろう。美子役の杉咲花もそのひとりだといいなと思う。105回の美子は、なんとか花山(唐沢寿明)に戻ってきてもらおうと、谷(山口智充)に相談に行く。お酒飲んだことないっていうところなんてほんとくすぐられる。
「とと姉ちゃん」で杉咲花を知って気になった人には、手塚治虫の日記を原案にした映画「トイレのピエタ」(15年、松永大司監督)をおすすめ。ちょっとやさぐれた女子高生をエネルギッシュに演じ、その野生がめちゃめちゃ哀切を帯びている。思い詰め系女優だからこそ美子のことも最高に健気に見せる。唐沢寿明に次いで主役を食いそうな勢い。唐沢、杉咲、研音勢が総力あげて主役に迫っている。
(木俣冬)