90年代のゴジラ映画は、そんなセンセーショナルなキャッチコピーとともにシリーズの幕を下ろした。
1995年12月公開の「ゴジラVSデストロイア」。
ヒットを連発していたゴジラ
1984年公開の「ゴジラ」以降7作品が上記シリーズとされるが、91年公開の「ゴジラVSキングギドラ」が興行収入14億5000万円のヒット。次作の「ゴジラVSモスラ」は22億2000万円というシリーズ最大の興行収入で、シリーズ最大のヒット作となった(観客動員数は1962年の「キングコング対ゴジラ」が歴代トップ)。
当時先端の合成技術を使ったド派手な光学処理のインパクトも強く、どこか「ターミネーター」や「インディ・ジョーンズ」を思わせるような、流行を取り入れた演出。そして何より昭和の人気怪獣の復活ということもあり、親子で楽しむ娯楽大作としてヒットを連発した。
ゴジラの死で終わった90年代シリーズ
とはいえ、逆にいえばこの「VSモスラ」がピークであり、徐々に動員数は落ちていく。
93年の「VSメカゴジラ」、94年の「ゴジラVSスペースゴジラ」と、少しずつ興行収入も減少。この時期、ハリウッド版の「GODZILLA」の制作が決まっていたこともあり(公開は98年)、シリーズはいったん終了する。ゴジラの死という結末で。
それまでゴジラが死んだ描写があったのは、1954年の1作目の「ゴジラ」だけだった。昭和の正義の味方のようなヒロイックな時代には、最後に敵を倒し、悠々と海へと姿を消していく姿に「終」の文字がかぶる、というラストシーンが多く描かれた。
そんな事情もあってか、本作は1作目を意識した描写が多い、というか、1作目直結の続編のような描かれ方をしている。
1作目のヒロイン、山根恵美子(河内桃子)の登場や回想シーン、かつてゴジラを葬り去った禁断の兵器「オキシジェン・デストロイヤー」の存在。オープニングの演出も1作目を意識したもので、オールドファンへのサービスも満載だ。
自らの死が迫っていたゴジラ
90年代ゴジラは、当時の流行の設定のひとつでもある、己が最大の敵として立ちはだかる系のパターン(悟空の細胞を利用したセルなどもそうか)。ビオランテやスペースゴジラは、ゴジラの細胞から誕生した、いわば「分身」のような存在。メカゴジラは言うまでもなく、ゴジラを参考に製作された対ゴジラロボット。そしてデストロイアは、オキシジェン・デストロイヤーに起因し誕生したという生物。
シリーズ最大、最後を飾る敵にふさわしい存在(デザインも)だが、ゴジラの敵はそれだけじゃなかった。
ゴジラには、自らの死が迫っていた(下記よりネタバレありです)。
本作で登場したゴジラは、長年なじんできたダークグレーの姿と全く異なっていた。
全身が、真っ赤に燃え上がっているかのようだった。
本作のゴジラは、体内にある炉心が暴走し、「核爆発」寸前だという状態で出現した。
万一ゴジラが核爆発を起こせば被害は想像を絶するものになる。
爆発を食い止めることができても、ゴジラの体内が1200度に達したとき、メルトダウンを起こす可能性があるという。やはり、地球の危機である。
紅蓮の炎に包まれたような姿のゴジラ、香港の夜景の中に現れる姿などは印象深い。
そんな見た目のインパクトの強さもあってか「バーニングゴジラ」「デスゴジ」と呼ばれたりするこのゴジラの人気は高い。フィギュアなど商品化されるときにもラインナップに加わる率は高い。
作品終盤、ついにメルトダウンを起こすゴジラ。
果たして……。
2011年を通過した我々にはなかなか刺戟的な設定ではあるが、メルトダウンシーンでの甲高い咆哮は、どこか悲しげに響く。
新たな作品も よみがえるゴジラ
しかし、新たな局面を迎えるたび、ゴジラはよみがえる。98年の「GODZILLA」を経て、99年暮れ、「ゴジラ2000 ミレニアム」で華々しく国内で復活。2004年の「ゴジラ FINAL WARS」までの6作は通称「ミレニアムシリーズ」と呼ばれる。
ちなみにシリーズ最大のヒットは、「劇場版とっとこハム太郎」との併映となった「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(01年)。「ゴジラ×メカゴジラ」(02年)などヒット作も生まれた。
2014年公開、渡辺謙も出演しヒットした「GODZILLA ゴジラ」を経て、2016年7月。「シン・ゴジラ」公開。
日本では「FINAL WARS」以来12年ぶりという、過去最長の休止期間を経てスクリーンに帰ってきたゴジラ。
その姿は、「VSデストロイア」版を彷彿とさせるように赤く発光している。
どんな展開が待ち受けているのか。まずは、劇場で確認か。
(太田サトル)
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