近年は、悪党やダメ人間役を熱演する機会が多く、追い込まれた状況からの魂の叫びは、もはや名人芸の域である。
その絶叫の原点となるのが、2000年12月公開の映画『バトル・ロワイアル』。社会問題にもなった衝撃作である。
林真理子や荒俣宏も凄惨すぎる原作の内容にドン引き!
強制参加とはいえ、中学生同士が殺し合いをする内容の『バトル・ロワイアル』。高見広春の同名小説が原作だ。
元はといえば、97年の第5回「日本ホラー小説大賞」応募作。最終選考にまで残ったが、あまりに凄惨な内容に審査員が一様に否定的コメントを残す形で落選となっている。
荒俣宏「42人の生徒が一人一人殺し合う構成というのは、やっぱりちょっと問題がありすぎるんじゃないかって思います」
林真理子「いくらホラーで面白くても、こういうものを書いちゃいけないんじゃないかなと思います」
しかし、衝撃的なストーリーと高い娯楽性が出版関係者の間では評判に。それを受け、太田出版から99年4月に発行となった。サブカル系で有名な太田出版だが、有害図書指定を受けた『完全自殺マニュアル』や、神戸連続児童殺傷事件の加害者である元少年Aの著作『絶歌』など、問題作も積極的に発表する姿勢の出版社である。
有識者たちが批判したことは、むしろ格好の宣伝となり、40万部を超えるベストセラーに。そして、深作欣二監督の目に止まったことにより映画化されることとなる。
R15+指定にも関わらず大ヒット!藤原竜也は新人賞を獲得!
少年犯罪が問題視され始めた時代背景もあって、国会では上映禁止を求める質疑も繰り広げられた。映画自体は「R15+指定」となり、主人公と同じ中学生は鑑賞ができない形となったが、深作監督ならではのバイオレンス・アクション描写も話題となり、興行収入30億円超えの大ヒットを記録。第43回ブルーリボン賞作品賞を受賞し、同新人賞を藤原が受賞している。
当時18歳の藤原竜也は、主人公の「七原秋也」を熱演。原作を読み込んだ藤原は、主人公に感情移入し過ぎて涙が止まらなかったという。そうして臨んだ撮影現場は、深作監督の激しい喝が飛ぶ毎日。夕方に始まったリハーサルが深夜3時まで続いたこともあったそうだ。
全編に渡って悲鳴、絶叫のオンパレード。海に飛び込む、爆風で吹き飛ばされるなどの危険なシーンもスタントなしで挑んだ過酷な経験は、確実に俳優・藤原竜也の血肉となったようである。
脇を固める豪華な出演者たち
物語のキーマンとなる、ゲームを仕掛ける側の教師キタノ役にビートたけし。原作やマンガでの「金八先生」イメージではなく、自身の映画で見せる“静かな狂気”を感じる役柄だ。
ヒロインは前田亜季。15歳にして芸歴8年、すでに8本目の映画出演となる。
前回のゲームの生き残りであり、サバイバル術に精通する頼もしい味方に山本太郎。生徒役42名の中で最年長の26歳。撮影現場では、兄貴分としてリーダーシップを発揮し、リアルに「山本太郎となかまたち」状態だったようである。
極限状態から“奪う側”に回った美少女殺人鬼に柴咲コウ。「ファンデーションは使ってません」の『ポンズ・ダブルホワイト』のCMで一躍人気者となった頃。ファンデーションは使ってないが、返り血浴びまくりの塗りまくりであった。
栗山千明、塚本高史、高岡蒼甫らも個性が光る演技で注目を集めている。
命懸けのゲームに巻き込まれる、いわゆる「デス・ゲーム」系と呼ばれるジャンルを切り開いた金字塔にして、藤原竜也の絶叫の原点『バトル・ロワイアル』。
過激すぎる内容ゆえ訝しがる向きも多いと思うが、原作者が「少年ジャンプに勝ちたい」と語ったその高いエンターテイメント性にも注目の上、あらためてご覧いただきたい名作である。もちろん、藤原竜也の初々しい(?)叫びも必見だ!
(バーグマン田形)
persona―藤原竜也写真集