
フツーの人たちがそれぞれの立場でやるべきことを遂行し、ゴジラという国難を乗り越えるプロジェクトX。この表現は特撮映画に思い入れのない人でさえ心打たれ、公開2週後も興行収入トップを走っている(まぁ最大のライバル『ワンピース』が公開3週目という事情はあるが)現実をよく説明している。
でも、ただ事じゃない爽快感は、それだけじゃ説明できない。綿密な取材、微に入り細にうがった考証に裏打ちされたリアリティを積み重ねて、「思考停止していたタブー」を踏み越えているから」じゃないか。『シン・ゴジラ』は多くの人々を囚われていた何かから解放する「憑き物落とし」だったのだ……。 ということで、ネタバレ全開でお送りします。いま語っておかないと、見てない人達が興味を抱かないまま上映が終わる悲しい事態が起こるかもしれないから。間に合わなくなっても知らんぞーー!!
「震災」という憑き物
今回のゴジラは東北大震災であり、原発事故だ。海から押し寄せて文明を瓦礫の山と炎の渦に叩き込む脅威、赤く光ってメルトダウンしそうな怪物を冷やそうとホースを突っ込む作戦行動。その進行ルートが放射能の拡散と一致している足取り。そもそも市民に放射能を検出する計器が普及してるこの世界は「その後」かもしれない。