「成功に必要なのは99%の運と1%の努力」

様々な場面で語られているこの類の人生訓。しかし、所詮は客観的論証に基づかない個人の印象論に過ぎないため、特に努力至上主義を生きる体育会系の人材からは忌み嫌われる上記の格言。

とはいえ、杉村太蔵のキャリアを見ていると、人生における「運」の重要性を感じずにはいられません。

スポーツ推薦で入学した杉村太蔵、弁護士を目指したものの…


彼はもともと、父、祖父は歯科医、曾祖父は弁護士という北海道の名家に生を受けます。幼少期からはじめたテニスでの実績を活かし、大学は筑波大学体育専門学群にスポーツ推薦で入学。順風満帆な人生を歩んでいました。
そんな太蔵に最初の試練が訪れます。弁護士を目指して司法試験の勉強をしていたものの叶わず、6年間大学に通った後に中退。法曹界への夢は諦め、一般企業への就職活動を行いますが、それも途中で投げ出してしまいます。「もう実家に帰ろう…」そう思って父に連絡したところ「帰ってくるな。働けないなら死ね」とキツイ一言が飛んできます。

先に断っておくと、太蔵は単なる調子の良い成り上がり者ではありません。彼の特筆すべきところは、物事を肯定的に受け取ってしっかりと努力していくところ。この時も「それくらいの覚悟がないと人間は生きていけないんだ」と考えを改め、自立して生きていくことを決めたというのだから、根は素直な人間なのでしょう。

ビルの清掃員をしていたところを、外資系企業の社員にヘッドハンティングされる


兎にも角にも、太蔵は関東に残り、派遣社員としてビル清掃員の仕事を開始。ここでも太蔵は持ち前のバイタリティで自分に与えられた業務を全うしつつ、先輩スタッフが真摯に働く姿を見て、「職業に優劣はない」と悟ったとのこと。

まあ、後に政治家となる男が自分で語った話ですから、多少美談として盛っている部分はあるのかも知れません。けれども、同じビル内で働いていたドイツ人証券マンの目に留まり、半ばスカウトに近いカタチで入社を勧められたというのだから、周囲との人間関係も大事にしながら懸命に働いていたのでしょう。

26歳で政治家になった杉村太蔵、放言連発で物議を醸す


ドイツ証券の入社試験をパスした太蔵が配属されたのは株式調査部。そこで上司から郵政民営化の動向を調べるよう命じられます。その調査の過程で閲覧した自由民主党の公式サイトにて候補者を公募していることを知り、提出課題『郵政民営化と構造改革についての論文』をこれまで知り得た知識をまとめて応募してみたら合格。
そして2005年の郵政解散総選挙の際、「小泉チルドレン」の一人として出馬し、自民党優勢の流れに乗って見事当選を果たすこととなったのです。杉村太蔵、26歳の時でした。

これまで苦難続きだった社会人生活においてようやく訪れた果報。喜びを爆発させた太蔵は、当選した直後に印象的なコメントを多数残しています。しかし、あまりに素直すぎるその発言は当時物議を醸しました。「早く料亭に行ってみたい」「真っ先に調べたのは国会議員の給料。2500万円ですよ!」「BMWが買える」などなど……。

品格を求められる国会議員のセオリーからは明らかに逸脱したその人物像に眉をひそめる良識派がいる一方、若者からは比較的好意をもって受け入れられ、ちょっとした「タイゾーフィーバー」まで起こったものでした。

今ではテレビタレントしても活動している杉村太蔵。紛れもなく彼は運の人です。けれども、その運を掴むために腐らず行動し続けた努力の人であることも忘れてはなりません。
(こじへい)


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