大ヒットしている庵野秀明総監督・脚本の『シン・ゴジラ』。東宝のゴジラシリーズとしては12年ぶりの作品となり、国内初のフルCGでゴジラが制作されました。ゴジラのCGには、人が演じた動きを反映するモーションキャプチャー技術が使われ、着ぐるみでは再現できない細部の表現が可能になりました。

野村萬斎氏の動きをモーションキャプチャーで収録


「シン・ゴジラ」が着ぐるみではなく、フルCGだからできたことって?
(C)2016 TOHO CO.,LTD.

ゴジラの体長は史上最大の118.5メートル。無機質な目、赤く発光する体、ごつごつした皮膚のテクスチャーなど、各パーツの細部に至るところまで、庵野総監督のこだわりが反映されています。別の生き物のように動く長い尻尾や細い腕は、着ぐるみで再現できません。3DCGで制作してこそのゴジラのシルエットになっています。

ゴジラはただ歩くだけで、荒ぶる神のような姿を表現する必要があります。モーションキャプチャーで動きを演じたのは狂言師の野村萬斎氏。「狂言が人ではないものを動きだけで表現するのに長けているため」依頼したそう。『のぼうの城』ですでに知った仲だったこともあり、樋口監督が直接オファーしたとか。ゆっくりと進むゴジラに迫力があるはずです。

モーションキャプチャーの収録は、画像コンテンツの開発や制作などを行うクレッセントのスタジオで行われました。



萬斎氏のアイデアでゴジラの面と尻尾が用意されたといいます。「面を付けると面の先が顔になる」というから、狂言師はすごい。また長い尻尾の重みを体感できるように、重しを引いて歩行したそう。画像では前傾姿勢になっていますね。

フルCGゴジラに使われたモーションキャプチャー技術とは


萬斎氏が着ているスーツに点のようなものがあります。この点について、デジタルハリウッド大学で3DCGの授業を受け持つ小倉以索准教授に解説をお願いしたところ、「スーツにある銀色の点がセンサーになっています。スタジオ内にある数台のカメラから発射された赤外線が点で反射し、カメラが認識。そうすることで点の位置情報をデータ化することができます」とのこと。

ではどのように萬斎氏が演じた歩行データを、CGゴジラに反映したのでしょうか。小倉准教授いわく、「キャラクターデザイン担当の竹谷隆之さんが作ったひな形をスキャンして3Dデータを作成し、そのCGに萬斎さんの動きのデータをはめこむんです」

ちなみに「ゴジラの下あごやの開閉は特殊な動きをしているため、CGで作っている」そうです。なるほど……、着ぐるみではできない表現でもありますね。

他にも着ぐるみではできなかった表現を聞いたところ、「着ぐるみの場合、ミニチュアを作らないといけません。そうするとリアリティがなくなります。たとえば爆発シーン。15センチの爆発と15メートルの爆発って、煙のスピードが違うんです。本物の爆発を再現するなら、煙がゆっくり動くはずです。そういう演出もミニチュアでは難しかったと思います」(小倉准教授)

恐怖の対象としての造形の魅力


「シン・ゴジラ」が着ぐるみではなく、フルCGだからできたことって?
(C)2016 TOHO CO.,LTD.


今作のゴジラは、第一形態から第四形態に進化。萬斎氏が演じたゴジラは第四形態のゴジラです。第二形態の容姿や、第二形態から第三形態へ進化する過程も含め、今までにない形態のゴジラは本作最大の見どころとなっています。

公開日に「日本の映画界が誇るゴジラという生物のDNAに650年以上の歴史を持つ狂言のDNAが入った(意訳)」とコメントした、萬斎氏の怪獣王。一度見た人はもう一度、まだの人はスクリーンで、まさに厄災として東京に襲来するゴジラの圧倒的な姿を拝んでみてください。
(石水典子 )