いい、すごくいい。
『君の名は。』特報3(youtube 東宝公式)
今までにも増して映像がきれいで、はやくもう一回見たい。
物語は二転三転するので誰かに話したくて仕方なくなくなる。
でもこれは、絶対ネタバレしたらだめなやつ。
ぼくは今必死にTwitterに書き込むのを我慢して、のたうち回っている。
同時に、「新海誠が、ものすごくポジティブになった! そしてついにメジャー作家になった!」と驚き、ニヤニヤしている。
というのも、この監督は長いこと、TVには出ないタイプのマイナーメジャー作家だったからだ。
あらすじ
『君の名は。』は、少年少女が入れ替わる物語。大林宣彦の『転校生』(または原作の『おれがあいつであいつがおれで』)のギミックと似ている。
大都会に住む少年・立花瀧。ど田舎に住む少女・宮水三葉。
2人は、一度も出会ったことがないのに、なぜか寝たあとにランダムで入れ替わるようになってしまった。
スマホやノートにメモ書きを残し、元に戻った後にお互いそれを読み、各々の存在を確認する。
というのがネタバレしない範囲でのあらすじ。
ここから先は言えない。見に行く人は物語の事前知識なしがいい。
背景のエロティシズム
新海作品の背景は、とてつもなくフェティッシュだ。
画面の隅々まで隙無くぎっちり描き込み、JJエイブラムスばりに光を使う。
キャラの感情を表現する装置だからだ。
今回は、大都会のビル一つ一つを丹念に描いている。田舎の木々一本一本に目を留め、その色合いを丁寧に塗りこんでいる。時に、その一つ一つが動く。
カメラはぐいぐいと角度を変え、回転する。街を、村を、湖を映す。
監督も、キャラクターも、世界は本当に素晴らしいって思っているから、どうしても必要な表現なのだ。
とはいえ、舐め回すように街と田舎を映し続けるのは、もう執念に近い。美しいというよりセクシャル。
スクリーンで、今までで最高の背景大好きっぷりを見せてくる。
変態だと褒めたい。
誰もが楽しめる「シン・新海誠」
時折インナーな、感情表現を重視する作風を、さらにメジャーに、多くの人に伝わるよう強く意識している。
大きいのは『とらドラ!』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の田中将賀がキャラクターデザインをしていることと、『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』の作画監督・安藤雅司が参加していることだ。
新海「田中さんはスタイリストみたいな方なんですよね。(中略)今のファッションや若者の空気感というのをたぶん意図的にインプットされているんじゃないかな、と」
新海「安藤さんには、時代を超える普遍性があるんです。(中略)、誰がいつ見ても心に迫ってくるお芝居を描き出してくださっている」
(パンフレットより)
目の肥えたアニメファン。普段アニメを見ない若者層。
新海誠ならではの身体的なフェティッシュな部分は、ものすごーく丁寧に物語と絵と音楽でコーティング。
それでも入れようとするのが新海誠らしい。好き。
『ほしのこえ』の時には「セカイ系」とも言われた、「きみとぼく」2人の距離感が、世界のあらゆるものを超越するような感覚。自分に常に問いかけ続ける叙情性。新海誠の武器だ。
ウェットな根本は大事にしつつ、さらにキャラクターが一皮剥けて前に進んだ。
1ファンとしては、驚いたし、嬉しくてならない。
だって、今までの考え方なら「あのシーン」で終わりでもいいんじゃないか、と一瞬思ったもの。
そこからが、すごかった。物語がロッキーみたいに何度も起き上がる。
今までの新海誠の集大成(『言の葉の庭』など今までの作品のセルフオマージュも、ちょっと入ってます)であり、次のステージだ。
新海誠作品を見てない人は、先に全部見てから……という必要は無い。むしろこれが入門編だ。
映画の後で過去の作品を見ると、監督の思想の原点がわかって、面白い。
すでに見た人には、物語のかゆいところを見ることが出来るサブストーリー集「君の名は。 Another Side:Earthbound」がオススメ。
「小説 君の名は。」は新海誠本人が書いた小説。視点がちょっと異なっており、相互補完になっている。「君の名は。」コミック版は映画にとても忠実なので、映画を思い出すのに最適だ。
児童文学がメインの角川つばさ文庫でも小説版が出ている。
あと『シン・ゴジラ』と合わせてみるといいです。
見ればわかります。
(たまごまご)