私の知り合いで、かつて某民放キー局の派遣社員をしていた男がいます。彼の話によると、同局には、第一線を退いたシニア世代が飛ばされてくる部署があったらしく、そこでほとんど1日中、ネットサーフィンをして過ごすオジサン社員がいたとのこと。

オジサンの年収は何と1000万円以上(あくまで噂ですが……)。それを知って、時給千数百円で働いているのが馬鹿らしくなったと述懐していました。

総務省から与えられた放送免許 既得権益化するテレビ局


なぜこんなにも、テレビ局社員が高給取りなのかといえば、答えは単純。テレビ放送が、国からのお墨付きを受けているから。テレビ放送に利用できる電波というのは国ごとで限られており、日本においては、最初に総務省から免許を取得した数局により、マーケットが寡占されているという現状があります。

他に割り当てられる電波はないため新規参入は起こらず、日テレ・TBS・フジ・テレ朝・テレ東の民放各局は競争が最小限で済むわけです。
しかし今から10年前に総務省の怒りを買い、その大事な既得権益を失う寸前になった局がありました。

健康情報番組『ぴーかんバディ!』で放送した内容が問題に


電波停止の危機に見舞われたのは、東京・赤坂に本社を置くTBS。2006年5月6日、同局の健康情報番組『ぴーかんバディ!』にて放送された内容が事の発端でした。
番組では、ダイエットに効くとして“ファセオラミン”という成分を紹介。この成分には肥満の原因となる炭水化物の消化・吸収を抑える効果があるとされており、これを多く含む白インゲン豆を3分炒めて粉にし、ご飯にまぶして食べるという独自のダイエット法を紹介。手軽に実践できるとあって、当然、視聴者は飛びつきました。

激しい嘔吐や下痢、650件以上の苦情が寄せられる


しかし、ここで問題が発生。インゲンには“レクチン”という有害な成分も含まれており、十分加熱して消滅させる必要があったのですが、そうとも知らずに3分程度でさらっと調理した人から「激しい嘔吐や下痢の症状が出た」という旨の苦情が殺到。問い合わせは、650件以上にも上ったといいます。

これを重く見た総務省は、総務大臣名での行政指導(行政指導の中で最も重い警告)の処分を下し、「同様の問題を引き起こせば電波停止もあり得る」とも明言。

軽い処分だけで済ませたTBS


今回ばかりはTBS側も、ただでは済まないだろう……。多くの人がそう思ったのですが、苦言は呈されたものの、それ以上、国からのお咎めは何もなし。同局が社内で下した処分は取締役2人の減俸と、制作局長を2~3日間出勤停止にするという非常に軽いペナルティのみでした。

この騒動により『ぴーかんバディ!』は人気が低下したため、事件から3ヶ月後に放送終了。問題の責任を取って放送を自粛するのではなく、単に低視聴率を理由に打ち切るあたり、局側が被害を重く受け止めていないのは明らか。どんな事故を起こそうが、放送免許は永遠に剥奪されないのでしょうか。
(こじへい)
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