ハジメも心を開いてくれ、ようやく本当の親子のようになれた……というタイミングで、実の母親の母親、要はハジメにとっておばあちゃんにあたる月子(富田靖子)が現れ、ハジメを連れ去ってしまった。
法律的にも勝ち目はないし、もうハジメと一緒に暮らすことはできないのだろうか!?
『はじめまして、愛しています』(テレビ朝日系・木曜21:00〜)第8話では、ハジメくんと引き離されてしまった美奈&信次の苦悩が全開でした。

どこでもドアがあっても問題は解決しませんよ
数ヶ月とはいえ、本当の親子のように愛情を注いできた子を奪われてしまったとしたら……。まあ相当にショックであろうことは想像に難くないですが、それにしても美奈&信次夫婦のショック受けっぷりはすごかった。
夫婦の会話はなくなり、ハジメと同い年くらいの子どもを見かけるだけで目を背け、信次は会社を早退して自宅で体育座り。
美奈に至っては、
「ドラえもんのどこでもドアが欲しいな。そしたら、今すぐハジメに会えるのに……」
なんて夢見がちな発言をしてしまうほどのノイローゼっぷり。
いやいや、ハジメに会える会えないは距離の問題じゃなくて、もっと法律的なアレコレが問題なんでしょ?
このあたり、テレビ朝日での連続ドラマ初脚本担当ということで、遊川和彦がサービスしちゃったんじゃないかな? なんて勘ぐってしまうが。
美奈のノイローゼはまだまだ留まるところを知らず、月子の家を突き止め、塀を乗り越えて不法侵入し、ハジメをさらおうとする。
ハジメを奪われたことがそれくらいショックだったという表現なんだとは思うけど、もうあらゆる意味で……法的にも完全アウト!
ドラマ中では美奈&信次を正義、月子を露骨に悪として描いているが、月子の側に感情移入してみると、数か月間ハジメ(孫)の面倒を見ていただけの他人に、ここまで「ハジメは私たちのもんだ!」面をされたらたまったもんじゃないだろう。
ハジメもハジメで、いくら虐待されていたとはいえ、5年間一緒にいた実の母親をスッカリ忘れたかのように、数か月間過ごしただけの里親(候補)の方を「お父さん」「お母さん」と呼び続けるというのも、ちと薄情過ぎないだろうか!?
「我が子を食らうサトゥルヌス」に見入る志田未来の真意は!?
もう虐待はしないと言っているし、やっぱり実の親のところで育てるのがいいのか?
短い間とはいえ、ガッツリ愛情をそそいでくれた里親候補のところに戻るべきなのか?
今後の展開としては、美奈&信次の夫婦が、家庭裁判所に監護者指定を申し立てて、このあたりを問うていき、ハジメと再び暮らせるように戦う……。といったところじゃないかと思うが、その判断をする上でキーとなってくるのが、ハジメの実の母親である泉(志田未来)はどんな人間なのか。
そもそも、どうして虐待していたのか? ハジメの父親は誰なのか? さらに言うと、泉の父親も今のところ登場していないし。
いままでのところ、泉のセリフがまったくないこともあり、このあたりが丸々ナゾのままなのだ。
ただ今回、泉の内面を象徴するような場面があった。
ローマ神話に出てくるサトゥルヌスが、「将来我が子に殺される」という予言を恐れて5人の子どもを次々に殺していった……という神話をモチーフにした、ゴヤの代表作のひとつ。
この絵が、泉の抱える心の闇とリンクしていると考えるなら、ハジメの父親はDVの傾向があって、泉はひどい被害を受けていため、ハジメが成長するにつれ「この子も将来、私に暴力を振るうに違いない!」とか思い詰めた結果、ハジメを鎖につないで虐待してしまった……とかか?
まあ、ただ単に我が子を虐待してしまった後ろめたさを表現するための小道具だったという可能性もあるが。
今夜で最終回! ホントに話はまとまるのか?
この辺りのナゾも、今後じょじょに明らかになっていくハズ……と思ったら、次回で最終回なのか!
途中、サッカーワールドカップ・アジア最終予選のせいで放送が1週なかったとはいえ、ちょっと短くない? 結構色んな事情がゴチャゴチャ絡み合ったままだけど、本当にあと1話で終われるんでしょうか。
公式サイトの予告によると、
「最後に誰も予想できない奇跡が起こる…!?」
とのことですが、なんだかよく分からないままミラクルがおこってめでたしめでたし……みたいな最終回は見たくないからね!
まあ、ここまで最終回が気になっているということは、まんまと遊川和彦の術中にハマッているということなんだけど。
とりあえず、またやらかしエンドだったら「遊川和彦がまたまたやらかした!」という記事を書かせて頂きます!
(イラストと文 北村ヂン)