
■尾崎裕哉/【billboard classics 尾崎裕哉 Premiun Concert-「始まりの歌」-】ライブレポート
2016.09.04(SUN)at よみうり大手町ホール
(※画像9点)
新たに生み出しているものと受け継いでいるもの、その両方が見えてきた
開演前の会場が静寂に包まれ、緊張感が漂っていたのは、どんなステージになるのか、観客も固唾を飲んで見守っていたからだろう。2016年9月4日、よみうり大手町ホール、【billboard classics 尾崎裕哉 Premiun Concert-「始まりの歌」-】と題されたステージ。


盟友であるトオミヨオ(ピアノ)、ビルボードクラシックス弦楽クァルテットというアコースティック編成でのステージ。目を引くのはアコースティックギターが6本並べてあったこと。ギターを手にする場面もあったのだが、1曲目の「Smile」は歌のみ。不思議な感慨が湧いたのは、透明感のある歌声もマイクを両手で包んで歌う仕草も彼の父親を彷彿させるところがあったからだ。


「僕も緊張しているんですが、みなさんも緊張していると思うので、リラックスしていただいて、楽しんでいければ。みなさんを笑顔にできたらと思っています」とのMCからは彼の律義な人柄もうかがえた。“チューニング・ソング”とのことでギターの弾き語りで、“今日は君の笑顔を見るまで帰したくないんだ”と即興の歌詞を歌い始めて、そのまま井上陽水作詞、玉置浩二作曲の名曲「夏の終わりのハーモニー」へ入っていく展開も鮮やかだった。本人が「ギターが大好き」というように、響きや鳴りを大切にしたギターの演奏も魅力的だった。松田聖子の「瑠璃色の地球」、SUPER BUTTER DOGの「さよならCOLOR」などのカバーも交えた構成。観客からどよめきが起こったのは「I LOVE YOU」。


15分の休憩を挟んで、前半7曲後半7曲という構成。ヒューマン・ビートボックスでスタートして、弦とピアノ、ハンド・クラッブが加わった「つかめるまで」はラップとアンビエントとが融合したような歌の世界が新鮮だった。ブルージーなギター演奏も披露しつつの尾崎豊のカバー「Teenage Blue」からは彼独自の魅力も見えてきた。「27歳になりまして。僕の父親は26歳で亡くなったんですが、父親の年齢を越えた決意を書きました」との言葉に続いて演奏されたのは「27」。強い意志の詰まった歌声がズシッと響いてきた。最後の曲は公演直後にDigital 1st Singleとして配信された「始まりの街」。運命を受け入れ、そしてこれからの人生を歩んでいく決意が描かれたナンバー。自分の気持ちを偽らず歌っているからこその歌声は感動的だった。


父親と同じ音楽の道を歩むのは決して簡単な選択ではないだろう。光も降り注ぐが、その光は同時に大きな影ももたらすからだ。だがその運命と対峙して音楽を生み出す姿勢にも拍手を送りたくなった。「曲をいっぱい作って、感動を届けるのがミュージシャンのやるべきことだと思う」との言葉も印象的だった。父親が決して迎えることのなかった27歳からの始まり。この先、彼がどんな風景の中を歩んでいくのか、見届けたくなった。
(取材・文/長谷川誠)
≪セットリスト≫
1. Smile
2. Moonlight
3. 夏の終わりのハーモニー
4. I LOVE YOU
5. 瑠璃色の地球
6. Road
7. With You
8. つかめるまで
9. Teenage Blue
10. サヨナラ COLOR
11. 離れていても
12. 流れる風のように
13. 27
14. 始まりの街
≪リリース情報≫
Digital 1st Single
『始まりの街』
2016.09.05リリース
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