ブラジルのリオデジャネイロで行われたパラリンピックの閉会式で流れた「東京は夜の七時~リオは朝の七時」が話題だ。この曲は、1993年にリリースされたピチカート・ファイヴの「東京は夜の7時」がもとであり、閉会式の楽曲は椎名林檎のアレンジだ。


「東京は夜の7時」は、ピチカート・ファイヴの5枚目のシングルであり代表曲のひとつ。この曲が流れていた時代をふりかえってみよう。

『ウゴウゴルーガ2号』のOP曲だった


「東京は夜の7時」は『ウゴウゴルーガ2号』(フジテレビ系)のオープニングテーマとして使われた。『ウゴウゴルーガ』は、90年代初頭にCGを多用した奇抜な子ども向け番組であり、『ウゴウゴルーガ2号』は、1993年の10月から毎週金曜の夜7時から行われていた生放送。
つまり金曜日は、朝と夜に『ウゴウゴルーガ』が放送されていたことになる。この番組に出演していたウゴウゴくんとルーガちゃんがコーラスに参加した『ウゴウゴルーガのピチカート・ファイヴ』もCDで発売されている。

『ウゴウゴルーガ2号』のオープニングCGは、大阪の通天閣を前に巨大なおっさん2人が対峙し、ロボット化してバトルを開始。通天閣の先っぽを相手の尻に突き刺すというカオスなもの。
“オシャレな東京”ではなく“コテコテの大阪”が描かれる。これは『東京は夜の7時』の洗練された世界感を中和する意味合いもあったのだろうか。

バブルの残り香も 『東京は夜の7時』の歌詞


実際『東京は夜の7時』は女性がタクシーに乗り、恋人に会いに行くさまが描かれた“オシャレ”な曲だ。PVでもヴォーカルの野宮真貴がタクシーに乗り、双眼鏡で東京の風景をのぞいてゆく場面が描かれている。
タクシーに乗って“夜の7時”に恋人とデートの待ち合わせに向かえる……。
ブラック労働がまん延する今から思えば、ものすごい健全な世界である。さらに、相手はバラの花束を抱えて待っているという…。
もちろん、この曲が当時の若い女性のリアリティを代弁した曲であったわけではないだろう。ただ、バブルの残り香がただよう、多幸感あふれる90年代はじめの東京の空気をうまく切り取っているように思う。

2001年に発売されたピチカート・ファイヴの最後のアルバム『さ・え・らジャポン』のジャケットは、日の丸を思わせる、赤い円の中心に白抜きで東京の文字が記されている。このイメージの通り、ピチカート・ファイヴはあらゆる欲望と消費が集積する場所ーー東京を象徴する音楽であった。ゆえに、東京オリンピック、パラリンピックに向けて「東京は夜の7時」がクローズアップされるのも必然であったのだろう。
(下地直輝)

※イメージ画像はamazonよりsingles
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