2015年から羽田空港を会場に開催されている「ハネダ・インターナショナル・アニメ・ミュージック・フェスティバル(HAF)」。
アニメは今や日本を代表するポップカルチャーになったが、日本語のアニソンを外国語に変えて歌うことは、どういった難しさがあるのか?
フランス語版を担当し、同シリーズにおいて「アンインストール(『ぼくらの』オープニング曲)」「残酷な天使のテーゼ(『新世紀エヴァンゲリオン』オープニング曲)」「突撃ロック(『NARUTO -ナルト- 疾風伝』オープニング曲)」「桜音(『よりぬき銀魂さん』エンディング曲)」「透明だった世界(『NARUTO -ナルト- 疾風伝』)オープニング曲」の5曲を翻訳・カバーする、歌手のノエラさんに話を聞いてみた。

エヴァのオープニング曲が最難関
――ノエラさんが今回担当した曲は5曲。どのように選曲しましたか?
自分にとって思い入れのある曲を選びました。私はポップロックが好きなので、そのような曲を中心に、原曲と自分の声質を比べて決めました。選んだ曲の中には訳出を相当迷ったものもあり、すべて終わるのだろうか、と何度も思いました。
――ノエラさんは日本語にも堪能で、歌手活動の他に、フランスでは大手アニメイベントの通訳やTVレポーターとしても活動されています。今回の翻訳も自分でされました。どのような点にもっとも気をつけましたか?
当然ですが、フランス語訳を可能な限り元の日本語に近づけるようにしました。もちろん中には、そのまま日本語をフランス語に訳すと、不自然な表現が出てきます。そういう点は意訳しています。
例えば『残酷な天使のテーゼ』の「蒼い風がいま 胸のドアを叩いても」の部分は、「蒼い風」「胸」を「新しい」「心」と変え「新しい風がいま 心のドアを叩いても」としました。

――翻訳することで、発音の違いによる音の増減が起き、それによってリズムが合わなくなるところが出てくると思います。そこはどう対応しますか?
ほとんどの箇所では歌い方を変えることで対応し、元の歌詞は極力変えないようにしています。しかし、例えば『アンインストール』の「恐れを知らない戦士のように」の部分は、フランス語にすると音が少なく、リズムに合わなくなくなってしまいます。そのため「恐れを知らない」という部分を、異なる言い回しだけど同じ意味になるフレーズで繰り返す、という具合に音を足します。
また原曲で韻を踏んでいたとしても、訳に支障が出る場合は、無理をして踏むことは避けました。日本語をそのまま残した場所もあります。『桜音』では「桜」という音の響きが印象的ですから、フランス語に置き換えず、あえて日本語で「さくら」と発音しています。
――5曲の中でもっとも翻訳が難しかったのはどれですか?
『残酷な天使のテーゼ』です。ほぼ、すべての箇所で訳に悩みました。この曲は日本語で歌詞を読んでも意味を捉えることが難しいため、そこからフランス語に直すのには、とても骨を折りました。サビは何度も繰り返され耳に残る部分ですから、そこの言葉選びも時間をかけました。

フランスにおける今の日本アニメの傾向は
――今回の曲は『エヴァ』や『NARUTO』といった超有名作品も含まれています。今、フランスにいる日本アニメ好きの人々の間では、どのような作品が人気ですか?
『暗殺教室』『ジョジョの奇妙な冒険』『Re:ゼロから始める異世界生活』『ReLIFE』『Rewrite』『モブサイコ100』『ソードアート・オンライン』でしょうか。日本で出たものが、少し後れてフランスで広まります。
――歌手はどうでしょうか?
きゃりーぱみゅぱみゅ、ベビーメタル、ジャニーズの各グループ、ONE OK ROCKなどです。ただ、一般的にフランス人なら誰でも彼らを知っているというわけではなく、多くは日本に興味があるフランス人の間で、人気があるという感じです。
――ノエラさん個人として今後、翻訳・カバーしてみたいミュージシャンまたはグループはいますか?
宇多田ヒカルさん、椎名林檎さん、ゴールデンボンバー、LUNA SEAです。もしそのような機会があれば、とてもうれしいです。
(加藤亨延)