前回のリーグ優勝は1991年のこと。当時のカープには、泥臭い力強さとどこかコミカルな雰囲気があった。それを象徴するのが達川光男という存在である。
珍プレーの王様・達川光男とは?
1991年のリーグ優勝決定の瞬間、キャッチャーとしてウイニングボールをつかんだのが達川光男だった。達川は広島カープを優勝に導いた立役者のひとりであり、ゴールデングラブ賞を3度も獲得した超一流選手である。その一方で達川は、「珍プレーの王様」という異名も持っている。
人気番組『プロ野球珍プレー・好プレー大賞』(フジテレビ系)で、もっともよく放送された達川の珍プレーにコンタクト落下プレーがある(プレーかどうかは不明)。達川は、グラウンドにコンタクトレンズを落とす騒動を2回も起こしている。
1990年・ナゴヤ球場での試合中、突然タイムをかけて地面にはいつくばる達川の姿に観客は騒然となった。さらに控え選手やコーチまでもが達川の周囲に集まり、地面を見つめ何かを探している。ここで「ただいま達川選手のコンタクト紛失のため試合を中断しております」というアナウンスが流れ、球場は笑い声に包まれた。
これぞプロ野球! 達川光男のデッドボール詐欺
コンタクト落下プレーと並び、達川を代表する珍プレーにデッドボール詐欺と呼ばれるプレーがある。バッターの達川が、実際には球が当たっていないのに、当たったふりをして審判からデッドボール判定を引き出すトリックプレーのことだ。
達川の当たったふりは演技力抜群で名俳優の域に達していた。バットのグリップエンドに球が当たった瞬間に腕を押さえて倒れ込む。内角にきわどい球が来ると平然と1塁へ歩き出す。もちろん球はかすってもいない。
しかしその動作があまりにも自然なため、審判も球が当たったものと信じ込んでしまう。しかもバッターボックスでは左腕を押さえていたのに、1塁にたどり着くと右腕を押さえているというオチまでついていた。
だが、いかに名人芸とはいえ何度も繰り返せば見破られてしまう。審判は、達川のデッドボールに目を光らせるようになった。そこで達川は創意工夫を重ね、倒れ込んだ瞬間に誰にも気づかれないように腕をつねって赤く腫れさせるなど、常人では思いつかない技術を身に着けていった。
達川光男の野球哲学とは
達川のデッドボール詐欺は、みのもんたのナレーションで「珍プレー」として何度もテレビ放送され、お茶の間の爆笑をさそった。しかし達川本人はいたってまじめなプレーだと語っている。そこには、「とにかく勝つことが第一」という達川のプロ野球哲学が見え隠れする。
今年、25年ぶりのリーグ優勝を果たした広島カープ。日本シリーズに進出する可能性も高い。ぜひまた達川のようなユニークな一流選手も出現してほしい。
(近添真琴)
※イメージ画像はamazonより熱烈!カープ魂