1990年代は超常現象や未確認物体や未確認生物といった、不思議オカルト系のテレビ番組の黄金期でもあった。それだけ世の中に理解のできない不思議な事象が、まだまだ溢れていた時代だったのかもしれない。

そんな中でもUFO(=未確認飛行物体)についての番組や特集は、いたるところで人気があったが、そんなテーマのときに決まって真っ向から否定していく論客キャラとして登場し有名になったのが、当時早稲田大学の教授でもあった、大槻義彦教授だろう。

オカルトを否定した大槻義彦教授


UFOはもちろんのこと、火の玉や心霊現象、ミステリーサークル、スプーン曲げなどの超能力なども、科学的な論拠で証明して、真実を暴くような論法が大槻教授のスタイルだった。その徹底ぶりは様々なテレビ出演のときも変わらず、半ば強引ともいえる自論で不思議な現象をバッサリと痛快に解き明かしていく。
もちろん、大槻教授に対しては、UFO・超能力などの肯定論派もたびたび登場する。彼らは大槻教授との異論・反論の舌戦を繰り広げ、見る側をますますヒートアップさせ盛り上がる構成となっていたのかもしれない。

大槻義彦vs韮澤純一郎


なかでもUFO肯定派で有名な、自称オカルト研究家でもある韮澤純一郎氏は、クセのあるキャラクターで毎度のように大槻教授と対論していた。理不尽なややボケのきいた韮澤氏の論拠と、大槻教授の徹底したオカルト否定論のツッコミでのやりとりには、かけあい漫才を見ているかのようなユニークさもあった。
「霊魂や超能力などありえない」とまで断言しながら、オカルト肯定論者たちをねじ伏せるマウントスタイルが痛快だった。


大槻教授は強引さを感じさせつつも、自身の研究テーマでもある「プラズマ論」を使ってなるべくわかりやすく、「科学で解明できないことはない」というスタイルで説明する。そこには、世間一般の大学教授の追随を許さない、エンターテイメントの才能もあったのだろう。

現在はゴルフ三昧の大槻教授


ただ、最近の大槻教授はといえば、教授職は早期退職し名誉教授になるものの、60歳をすぎて健康のためにはじめたゴルフにはまり、山奥に移住しながらゴルフ三昧の日々らしい。しかもそのゴルフに関する本も出版し、出版部数は10万部を超えるのだという。
しかし近年目撃されたUFO情報について尋ねられた際、その答えにはやはり「ただの自然現象なんですよ、気の持ちよう」といった調子で、相変わらずのオカルト完全否定の姿勢は変わらないようだ。

今では、ネットの情報、デジタル写真の技術が発達し、そのような対論をする余地もなくなってきてしまっているかもしれない。
しかし科学で解明できないものや不思議なことをテーマに、ああでもないこうでもないと議論を交わすやりとりは、世紀末という歴史的イベントを前にした時代の、ある種の空想を膨らませるのにふさわしかったのかもしれない。
(空町餡子)

※イメージ画像はamazonより子供は理系にせよ! (生活人新書)