90年代のフジテレビは尖っていたし、時代の先端を行っていた。テレビ局が自社のCMを打つことがなかった当時、いち早く取り組んだのもフジテレビだった。
フジテレビの持ち味である「突き抜けたセンス」を広くイメージ付けた自社CMの数々、あなたはご記憶だろうか?
『だんご三兄弟』『ピタゴラスイッチ』の原点はフジテレビのCM?
テレビ局が自社のCM枠を使って自局の宣伝をする。しかも、大々的なキャンペーンを張って。これは当時、革新的な取り組みだった。
担当したのはメディアクリエイターの佐藤雅彦氏。後に『だんご三兄弟』の作詞・プロデュースで大ヒットを飛ばし、現在はEテレの『ピタゴラスイッチ』『Eテレ0655&2355』の監修等でも活躍中のトップクリエイターだ。
当時は、「スコーン スコーン 湖池屋スコーン♪」のリズムで優雅に社交ダンスを繰り広げる『スコーン』や、「ポリンキー ポリンキー 三角形のヒミツはね…… 教えてあげないよ!ジャン♪」の『ポリンキー』など、湖池屋のスナック菓子のCMを中心に名を馳せていた。
世間を挑発? ハリウッド俳優を起用した一発ギャグ!
記念すべき第1弾のキャンペーンCMは1990年。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の「ドク」ことエメット・ブラウン博士で有名なクリストファー・ロイドを起用。3部作の完結編である『バック・トゥ・ザ・フューチャー3』公開時期とあって、大きな話題となっている。
頭だけ状態のロイドが、木魚やパチンコ玉、果ては視力検査のマークになったりとやりたい放題。顕微鏡でのぞかれているミジンコ状態のロイドがくしゃみで消し飛んだり、バクダンになって爆発したりと、超大物をイジり倒す構成でインパクト抜群だった。
そこに被さるのは「それ、世の中、動かしてますか。」や「フジテレビ新発売」といったキャンペーン・メッセージ。
笑いを通して伝わる「ルール」の奥深さ
91年には『ニュー・シネマ・パラダイス』で主役を務めた子役のサルヴァトーレ・カシオ君を起用。
公衆トイレが空かず、悶えるカシオ君や大勢の大人たち。その横を通り過ぎた犬が悠然と電柱に近づくと、気持ち良さそうにオシッコをシャ~ッ。そこに被さるのはキャンペーン・メッセージとなる「ルール」の文字。実に秀逸である。
様々なパターンが放送されたが、どれもシンプルかつ核心を突く構成で実にスマートであった。
「ちょっとした毒」が笑いのスパイスなのも特徴的!
92年は、モンスター総登場で「ホント」のメッセージを強調。
ホウキに乗って空を飛んでいた魔女がバランスを崩して落下した先はホウキが山盛りで、乗っていたホウキが分からなくなったり、ミイラ男が壁を突き破った先は全身包帯ぐるぐる巻きの重傷者たちの病棟だったりと、シニカルな笑いが散りばめられていた。
続く「哲学」では、チンパンジーを通じて、様々なシーンで哲学について考える風刺の効いた内容。ちなみに吹き替えはダウンタウンだった。
そして、93年のキャンペーン・メッセージは「サービス」。
カエルやモグラなどのキャラクターが、どこか過剰だったり、ズレた形でサービスをしてしまうといった内容であり、これもまた「ちょっとした毒」が笑いのスパイスとなっていた。
「サ~ビス タタタタタタタ~♪」のフレーズとカエルのマペット「ミカエル」をご記憶の方も多いのではないだろうか?
この「サービス」編の第1弾CMでは、ミカエルがこう歌っている。
「サービス誰かのために サービスみんなのために サービスあなたのために サービス自分のために」と。
お節介ながら、フジテレビのお偉いさん方にはこの歌の深い意味を、今こそ感じ取ってもらいたいのである。
(バーグマン田形)
※イメージ画像はamazonよりだんご3兄弟のえほん (教養・文化シリーズ)