この『ぼくらの七日間戦争』シリーズもそうだ。原作は当時の人気作家・宗田理。1988年に制作されたシリーズ1作目は、15歳の宮沢りえが初主演したアイドルムービーの傑作として今もファンは多い。
だが、3年後の91年に公開されたシリーズ2作目は、ほとんど映画史から消されているのが現状だ。テレビ放送されるのはいつもパート1。ぼくらの七日間戦争と言えば、アイドル宮沢りえの代表作として語り尽くされて来た。
ならば、今回のコラムでは劇場公開25周年を勝手に記念して、あえて不運の続編『ぼくらの七日間戦争2』をガチで観てみよう。
『ぼくらの七日間戦争2』のストーリー設定
ストーリー設定は前作とほとんど同じ、この時代の学園モノのド定番だ。学校や教師の行き過ぎた管理に反抗した中学2年生の男女グループが、あの手この手を駆使して大人たちに一泡吹かす。
主人公を演じるのは、1万人を超える応募者からオーディションを勝ち抜いた9人の少年少女たち。ヒロインの中山ひとみ役の渋谷琴乃は「特技:元気」とかなり投げやりなキャラ設定。前作の彼らは廃工場に立てこもったが、今回は沖縄へ飛ぶ。
えっ沖縄? 正直、バブル末期の当時でも「マジかよ?」と呆気にとられるリアリティのない設定だが、そんな細かいことはどうでもいいと思わせてくれる、わけの分からない勢いがこの映画にはあるのも事実だ。
リーダー格の菊池少年(明賀則和)が沖縄行きのフェリーの甲板で「まいったな~まさか俺が船酔いするとはな~」なんつって説明台詞丸出しの独り言を呟き歩いていると、出会ったのはのちに行動を共にすることになる謎の美少女(具志堅ティナ)。
軽く挨拶を交わしていたら「このヤロウ抜けがしやがって~」とどこからか現れる仲間達。その頃、学校には5人のママたちが集結。「試験ボイコット?ウチの子に限って!」と怒る母親たちに、「分かりました沖縄行きましょう!」と即決する教師(佐野史郎)。凄い、観ているものに突っ込む暇すら与えない、ベタすぎる台詞と設定の連続。まさに90年代初頭のキング・オブ・ベタ・ムービーだ。
映画監督のコメントにデジャヴ感?
そんなベタベタの展開を繰り返し沖縄入りした子どもたちは、追って来た教師たちと戦うだけでなく、現地の美しい海に圧倒される。小さなボートで漂流、海に潜り珊瑚を眺め、砂浜ではバーベキュー。コカコーラの伝説的CMシリーズ「I feel Coke」風に懐かしのBBクイーンズの軽快な楽曲に乗せて、夏を満喫する中学生たち。そこで現地の少年や自然と触れ合う内に、この映画のもうひとつのテーマでもある「強引なリゾート開発から沖縄の自然を守る」という使命に目覚めるわけだ。
映画パンフレット掲載の山崎博子監督のコメントには、こんな一文がある。「自然と遊ぶことを知らない日本の子どもたちが増えている。
このロジック、どこかでデジャヴ感がないだろうか? そう、2016年夏の『ポケモンGO』騒動を嘆く識者のコメントとほぼ同じだ。結局、大人と子どもはスマホがあろうがなかろうが、数十年前から変わらないバトルを繰り返しているのである。
ブレイクしたアイドルはゼロ
それにしても、1万人の中から勝ち上がって中学生役を射止めた9名中、その後宮沢りえのようにブレイクしたアイドルはひとりもいない。まるでドラフト指名された期待の若手選手が全員1軍定着できなかったプロ野球チームのような状況だが、本作がカルトムービー化した最大の要因もそこにありそうだ。なにせ最大のビッグスターが、TVドラマの冬彦さん役でブレイク前夜の佐野史郎なのだから。
ちなみに本作と同時上映の『幕末純情伝』には、当時の現役バリバリのアイドル牧瀬里穂が出演して話題となった。こうして振り返ると、『ぼくらの七日間戦争2』とは偉大なる第1作と比較され、さらに同時上映の牧瀬里穂にも主役の座を持っていかれた悲運の映画なのである。
2016年秋、『ポケモンGO』に疲れたあなたにこそ、オススメの一本です。
『ぼくらの七日間戦争2』
公開日1991年7月6日
監督:山崎博子 出演:明賀則和、渋谷琴乃、具志堅ティナ
キネマ懺悔ポイント:4点(100点満点)
中盤から後半にかけての意識が遠のくほどのグダグダ感、もはや物語を語ることを放棄したラストの酷さ。『北京原人』とはまた別のベクトルで90年代を代表するクソ……じゃなくてトンデモ映画として認定。
(死亡遊戯)
※イメージ画像はamazonよりぼくらの七日間戦争2 [レンタル落ち]