2016年10月22日(土)、阿蘇での道路状況を考慮したため6,000人限定となった来場者が参加した【MUSIC for ASO 2016 supported by ap bank】が、熊本県野外劇場アスペクタで開催された。小林武史・櫻井和寿らによるBank Bandをはじめ、熊本の復興への思いに賛同したMISIA、秦基博、藤巻亮太、Salyu、熊本在住の東田トモヒロ、DJダイノジらが参加した。


 今回の【MUSIC for ASO 2016 supported by ap bank】は、最初からすべてが特別だった。熊本地震の影響の残る熊本・阿蘇の復興のため、短い期間で実現したものであること。ap bankをはじめ地域・行政・アーティストが手を取り合うことでようやく叶った企画であること。そして、ap bankにとっては九州初となるイベントであること――4月の地震以来、阿蘇では道路状況や渋滞などが懸念される中、6,000人の来場者は阿蘇在住の人を除き、すべてツアーバスでの来場となる。イベント1週間前には阿蘇山の噴火もあった。そして、念願の当日は前日から続く雨。この日ステージに上がった蒲島郁夫熊本県知事からは「もしかしたら、半分ぐらいしか来場がないかもしれないと思った。しかし、6,000人全員が来場と聞いて驚き、心から感謝している」とのコメント。時折、激しすぎる雨脚に、30年余前に熊本県野外劇場アスペクタで開催された【BEATCHILD (ビートチャイルド)】という伝説のロックフェスティバルになぞらえたアーティストもいた。だからこそ、今日という1日は、アーティストにとってもオーディエンスにとっても、特別な思い出として刻まれることになった。

プロデューサー小林武史とMr.Childrenの櫻井和寿が中心となり設立されたap bank。日本のトップミュージシャンによって構成されるスペシャルバンドBank Bandと、名実共に一線で活躍中の豪華ゲストボーカルと名曲のコラボ。
櫻井和寿、MISIA、藤巻亮太、秦 基博、Salyu、東田トモヒロそれぞれのコアなファンでさえ、普段見ることができない新しい魅力と可能性を、このステージで堪能できる贅沢な4時間だった。

確かに、これまでのap bankが手がけてきたフェスとは規模も日数も違うかもしれない。実際、来場者の中には、野外ライブが初めてだという方や家族連れも多かった。雨の中でも、皆が純粋に曲を楽しみ、踊り、雨にけぶる阿蘇の情景を楽しみ、笑顔になる。汗か、雨か、涙かわからないほど感激している人もいた。ミニマムだけど凝縮された特別感がある。櫻井和寿がライブ中「最高!」と連呼したように、音楽の偉大さにあたらめて感動した瞬間だった。

地域の人とのつながり、絆の大切さも、会場のあちこちで感じることができた。オープニングで南阿蘇の小倉地区に伝わる郷土芸能「小倉の虎舞」保存会メンバーによる“虎舞”とおはやしがステージを彩ったり、会場内には阿蘇を体験・体感する食イベント「“阿蘇「世界農業遺産復興マルシェ」も開催。阿蘇の人気飲食店や農家組合など40店舗が出店し、阿蘇の魅力の詰まった食を求め、常時行列ができていた。音楽イベントの域を超えた遺産を、地域に確実に残せたライブとなった。
(取材・文/AKI MATSUMOTO[KUMAMOTO LIVING])

■「MUSIC for ASO 2016 supported by ap bank」オフィシャルサイト
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