障害者はゴミでも天使でもない! 当事者たちが訴えるライブイベント

<障害者はゴミではないし天使でもない! わたしたちは十人十色のワンオブゼム、これはあなたも含めた人間賛歌だ!>

11月3日、こんなフレーズをかかげたライブイベントが、東京・幡ヶ谷のライブハウス「HOME of CLUB HEAVY SICK」で開催される。

今回のイベントに出演するのは2組。

1組目は、さいたま市の障害者団体「虹の会」が運営し、主に知的障害者が働く大型リサイクルショップ「にじ屋」のメンバーを中心とした“ちんどんバンド”、「スーパー猛毒ちんどん」。
障害者はゴミでも天使でもない! 当事者たちが訴えるライブイベント
スーパー猛毒ちんどん

ちんどんというものの、基本はロックショーバンド。<障害者は(健常者に)勇気を与えるために生きてるわけじゃない>と掲げ、お世話される対象という巷の障害者像を壊したいという。
障害者はゴミでも天使でもない! 当事者たちが訴えるライブイベント

もう一組が、心身障害者のパフォーマンス集団「こわれ者の祭典」メンバーで、朗読詩人の成宮アイコ。
障害者はゴミでも天使でもない! 当事者たちが訴えるライブイベント
成宮アイコ

不登校やリストカットを経て社会不安障害と診断され、その時の思いを詩にし、楽器の演奏に合わせたりした「絶叫朗読」を行うようになる。
メンタルヘルスの当事者として、「生きづらさ・不登校・精神障害」をテーマに、共感する人とのつながりを紡ぎ出していく。
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普通にしているだけなのに応援されてしまう


イベントタイトルは、<スーパー猛毒ちんどんvs成宮アイコ 逆襲のロックショー>。
“vs”といっても、対決するわけではなく、2組によるコラボパフォーマンスも行われる予定だ。
2組のコラボのきっかけは、成宮がスーパー猛毒ちんどんのライブを見たことだった。
成宮アイコは言う。
「健全じゃなかったところにひかれたというのか(笑)。いくらでもシリアスにできるテーマではあるのですが、明るい曲調で、『俺たちは先生にいじめられた』というようなことをポップに歌う。自然と鼻歌して頭に残っていることに気づく。
すごいなと思いました。ちんどんの曲に『こわしてあげる』というフレーズがあって、この『あげる』というところに、愛を感じたんです。なかなか伝わりづらいことですが、伝わるといいなと思っています」

障害者のことを時折「天使」と表現することもあるが、そこにも違和感は、ある。
「天使でも悪魔でもないただの人間。ちんどんの母体となる『にじ屋』は、髪の毛を染めている人がいたり、夜遅くまで遊びに行ったり、飲み会もやっているので『にじ屋は不良の集まりだから行っちゃダメ』と言う親御さんもいるそうなんですが、そもそも成人の人間として普通の行動ですよね。自分で選べるものがいくらでもあったほうがいいと思うんです」
障害者はゴミでも天使でもない! 当事者たちが訴えるライブイベント
「さながら魑魅魍魎、混沌の演舞」という、スーパー猛毒ちんどんの世界。

何もがんばっていないのに応援されることも、ある。
「本人たちからしたら別にがんばってるわけじゃないことも、そうとらえられて応援されることもある。車椅子の友人が、エロ本を買いに行こうとしてたんです。そうしたら、通りがかりのおばあちゃんが、『がんばってるわね』と、ひざの上に千円札を置いてくれたそうなんです。エロ本を買いにいくだけなんだけどなって(笑)。転んだりしたら助けてあげたり助けてもらったりしますが、普通にしていただけで『がんばってる』と言われる。でも、その千円でエロ本を買ったみたいなのですが(笑)」


「私たちは勇気も与えないし、がんばれとも言わない」


成宮が詩を人前で朗読するようになってから13年になる。

「対人恐怖がすごかったので、最初はステージの真ん中に人形を置いて、お客さんに顔を伏せてもらっていたんです。だけど、見てくれた人から、『私もそういう過去があった』『家の中に暴力があった』などといったことを教えてもらって、自分と同じような人がこんなにいるんだということを知って、自分と少しずつ重ねあわせていくうちに、見られることへの恐怖はだんだん薄れていきました」

イベントをライブハウスで行うことにも意味はあるという。
「福祉イベントしか出なかったり、シリアスにやろうとすると、興味のある人にしか見てもらえなかったりするので、ロックフェスや音楽ライブに、内容を変えずに出ていることにはすごく意味があるんじゃないかなと思います。以前、福祉イベントに出たら、関係者や偉い人ばかり来ていたので(自分のやり方では)伝わらないかも……と思っていたら、県の職員の方が大きな拍手をしてくれていて、偏見をもってたのは私かもしれない、と気づきました」

障害者はゴミでも天使でもない! 当事者たちが訴えるライブイベント
今回のライブイベントには、歌とギターを担当するタダフジカ(写真・左)と、ライブペイントをおこなうTokinも参加。

今回のイベントは、楽しんで見て欲しいと成宮は言う。
「こちらがシリアスに訴えかけるわけではないので、ただ楽しもうぜ、という感じです。私たちは、勇気も与えないし、がんばれとも言わない。もちろんこういったやり方に嫌悪感をもつ人もいるでしょうし、明るくやるのは不謹慎だと言う人もいると思います。でもこのやり方が合う人もきっといる。選択肢のひとつになれば嬉しいです」
(太田サトル)


※スーパー猛毒ちんどんvs成宮アイコ+タダフジカ+Tokin
 逆襲のロックショー〜オレたちは馬小屋で産まれてない〜

【日時】2016年11月3日(木・祝) OPEN 18:30 START 19:00
【会場】HOME of CLUB HEAVY SICK(〒151-0066 東京都渋谷区西原2-27-4 升本ビルB1)
【料金】当日:¥2,000(+1ドリンク)
【お問い合わせ】048-855-8438(虹の会)
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