ビームスが創業40周年を記念して作成したミュージックビデオ「TOKYO CULTURE STORY 今夜はブギー・バック(smooth rap)が話題だ。

映像では東京の40年間のファッションシーンの変遷が紹介され、楽曲は森高千里、野宮真貴、ナカコー&フルカワミキら17組のアーティストがメドレー形式でカバーする。


1994年発売の「今夜はブギーバック」


「今夜はブギーバック」は小沢健二とスチャダラパーによるコラボレーションシングルとして1994年3月9日に発売された。小沢健二 featuring スチャダラパー名義による「今夜はブギー・バック (nice vocal) 」と、スチャダラパー featuring 小沢健二名義による「今夜はブギー・バック (smooth rap)」の同時発売だった。両バージョンを収録したアナログレコードも発売され、現在も高値で取引されている。

この作品は、東芝EMI所属の小沢健二と、キューン・ソニーレコード所属のスチャダラパーというレコード会社の垣根を越えてリリースされた。

「今夜はブギーバック」誕生の経緯


仲のいい友人同士であった小沢健二とスチャダラパーが、真剣に遊びながら作り上げた名曲「今夜はブギーバック」はどのように生まれたのか。『ロッキング・オン・ジャパン』1994年3月号(ロッキング・オン)のインタビューからひもといてみたい。

インタビューによれば、企画はスチャダラパーの側から立てられた。“この辺で軽い爪痕を世間に残しとこうなんていう(ボーズ)”という気持ちで、コラボ相手として小沢の名があがり、“それを受けて面白そうだなあって僕は快諾して。キューン・ソニーも東芝も大乗り気で(小沢)”企画が進んだ。

両者はもともと親交があり、渋谷クアトロのライブでコラボを果たしていた。そうした空気を“「これ残しとかなきゃマズいんじゃないの、こういうもんこそ必要なんじゃないの?」なんて言って、どんどん変わって全然違うものに(笑)(ボーズ)”なっていったという。

さらには、“今ラップの人とか結構出て来てるじゃないですか。やっぱりそういうのを聴いて、自分達はそういうのじゃないのをやって行こうと思ったんです(アニ)”といった戦略的な姿勢もうかがえる。

ヒットした「今夜はブギーバック」


「今夜はブギーバック」は両作合わせて50万枚以上の売上を記録する。
CDの広告では、スチャダラバージョンには「カラオケで歌えるヒップホップ登場! マジ泣けるッス!」、小沢バージョンには「“天使たちのシーン”から生まれた溶ろけるようなファンキー・ミュージック!」のコピーが添えられている。

確かにこの曲が生まれるまで、ラップやヒップホップはマイナーな表現であった。良くも悪くもラップの認知度をあげた「DA・YO・NE」のリリースは94年8月であり、本格的なヒットは翌95年に入ってからだ。
さらに小沢健二の知名度も高くはなく、王子様キャラでブレイクする『HEY! HEY! HEY! MUSIC CAHAMP!』(フジテレビ系)が始まるのは94年10月である。

サブカルチャーシーンの一部で名を知られていたスチャダラパーと小沢健二が、よりメジャーな場所へ躍り出るきっかけとなった作品が「今夜はブギーバック」であったと言えるだろう。
(下地直輝)
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