先日、アイドルグループの櫻坂46のライブ衣装がナチス・ドイツの制服を連想させるとして炎上した。しかし日本では、過去にもある番組がナチスの制服を巡る炎上騒ぎを起こしている。


『ここがヘンだよ日本人』で起きた軍服騒動


騒ぎは、2001年放送の『ここがヘンだよ日本人』(TBS系)内で起こった。この番組は1998年から2002年まで放送されたビートたけし司会の討論バラエティであり、スタジオに集った約100人の外国人が、日本(人)の気質、文化、風習、政治などあらゆるテーマで激論を交わす。
問題となった回には、軍服マニアと戦闘(サバゲー)マニアが登場した。

その際、軍服マニアの一人が、ナチス・ドイツの制服を着ていたことから、フランス人男性が「外で会えばマジで殴る」「好きだからって何でも(どんな格好をしても)いいのか?」と激怒したのだ。
フランスは第二次大戦時に、ナチス・ドイツに占領されていた。そのためフランス人にとっては、ナチスは屈辱の歴史であり怒りは当然であろう。

さらに、ドイツ人女性も「今やドイツでは公の場でハーケンクロイツ(ナチスの象徴である鉤十字)を見せただけでも犯罪。ドイツで同じことをやったら捕まる」と指摘した。

徴兵制がある韓国人男性たちからは、「軍服は除隊後に軽作業のスウェットとして使うようなもの。そこに価値はない。自分たちの国に軍隊がないコンプレックスなのでは?」「軍隊経験者としては馬鹿馬鹿しい。子どもがウルトラマンに憧れて、同じ格好をしているのと一緒だ」との意見も出された。

ビートたけし「要するに気遣いだ」


これらの一連の批判に対し、軍服マニアたちは「自分たちは戦争を肯定しているわけではない」「純粋に制服のデザインが美しいから着ている。特にナチス・ドイツの制服のデザイン性は優れている」と反論したのだ。


この軍服マニアたちの主張は、デザイン性に惹かれるあまり、その格好が持つ政治的な意味合いや、歴史的な背景を無視してしまっており、外国人たちの批判に答えていない。
結局のところ、議論の最後に出たテリー伊藤の「(日本人は)戦争に対する意識が薄い。アメリカに原爆を落とされたのに米軍のミリタリーファッションが売れる。そういう国なんです」という嘆きと、ビートたけしの「その国の人にとっては暗い歴史がある。要するに気遣いだ」という言葉につきるのだろう。

物議を醸した『ここがヘンだよ日本人』


ところで『ここがヘンだよ日本人』は、軍服をめぐる回に限らず、毎回炎上するテーマをわざと選んでいたといえる。
妊娠中絶の是非をめぐる回では、どこから見つけてみたのか、中絶手術を解説する海外の医療用ビデオを流して“かわいそう”な場面を演出。また、同性愛をめぐる回では、インド人男性が「自分の息子がゲイになったら殺す」と発言したことで、物議を醸した場面もあった。

さらに、出演者のキャラクターもステレオタイプに尽きるものだった。自分本位なアメリカ人、インテリなヨーロッパ人、日本批判を繰り返す中国人と韓国人、スピリチュアルなメッセージを向けるアフリカ人など、従来の日本人が持っている外国人のイメージをなぞったものである。
その点でいえば、『ここがヘンだよ日本人』は、80年代のサンコン、デーブ・スペクターから現在まで続く“外国人タレント”を起用した、王道バラエティのひとつであったのだろう。

※イメージ画像はamazonより
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