脚本:渡辺千穂 演出:梛川善郎

44話はこんな話
いよいよ新店舗に引っ越ししたすみれ(芳根京子)。だが、夫の紀夫くん(永山絢斗)は極度の人間不信に陥っていた。
一方、近江で仕事をはじめたゆり(蓮佛美沙子)は慣れないことに面食らうばかりで・・・。
今日の名台詞
「毒みたいなやつは ぎょうさんおるねん。泥水すすらんならん事もある。水に流さんならん事もあるのや。けど泥水は自分次第で湧き水に変える事もできんのや」(おばあちゃんトク子/中村玉緒)
苦労したらいいことがあることを泥の中から蓮が咲くことに例えるのは仏教が元だが、泥水を湧き水に変えることができると言うおばあちゃんは、なかなかスゴイ人だ。
しかも、わからなくてもいい、わからんかったら帰れ、と厳しい。
ゆりは闇市でも泥水でびしょ濡れになったりお風呂を見られたりしていたが、近江に来ても、屈強の半裸の男たちに囲まれたり、取引先のおじさんにお尻を触られたり、すみれと比べてひどい目に遭う率が高い。
すみれの好きな人・潔(高良健吾)を奪ったことの帳尻をこういうことで合わせられているのか。
はかりごとして奪ったわけでもないから、この差異がかわいそう。
とはいえ、すみれも
紀夫くんの心の状態が心配なところ。
紀夫「他人を信じるな」
すみれ「そんなさみしいこと言わないでよ」
というやりとりになって、紀夫の収容所時代の酷い体験が語られる。
「人ちうのは状況ひとつでころりと変わるもんや」ということをいやというほど味わってしまった紀夫。
戦争が終わったあとも戦争は続いていて、人の心やカラダを傷つけていく。
そういうことを書いた作品は過去にもいくつもある。永山絢斗には映画「タクシードライバー」のような役も似合いそうだなと思ったが、「べっぴんさん」はそこまで描くドラマではないだろう。
けれど、娘のさくらはお父さんに馴染んでない様子だし、外に出れば「敗残兵野郎が」という声にぎくりとなる。職も決まらず、お風呂に入っても悩みばかりが湧いてくる。こんな辛い描写が次々と・・・。
そういえば、先週土曜日(19日)にBSプレミアムで放送した「獄門島」の金田一耕助も復員兵で、戦争の影を引きずっている描写がしっかりされていた。
いま、NHKは復員兵描写強化月間なんだろうか。なぜ? そこが気になる。
勝手にちょっぴり減点さん
紀夫に「(奥さんが働くことを)なんで認められるのか?」と再度聞かれた昭一(平岡祐太)が「変わらなあかんと思うからです」と答える。
確かに奥さんたちは変わろうとがんばっていて、それに打たれて応援しようとしているのだろう。でも、いまの紀夫は「変わる」ってこと自体についていけてない。病気の奥さんが元気になったからというような具体的な話をしてあげたらいいのになあと軽いツッコミ気分になった。ごく軽くだし、あとから出てくるかもしれないから、まだ様子見で。
でもやっぱり賞賛さん
近江で、ゆりが奮闘しているところをおじさん(本田博太郎)が障子に半身隠して見ている。「家政婦のミタ」
か「家政婦は見た!」か「家政夫のミタゾノ」か。というのは置いておき、43回の引き戸の裏の紀夫くんとリンクしている感じでいい。屈折した性格のひとは何かに身を隠しがちなんですね。
あと、お手玉で遊んでるさくらの開いた足の形がかわいい〜。あのぽちゃっとした感じがたまりません。
栄輔の「可愛らしうて可愛らしうて」という気持ちがよくわかる!
(木俣冬)