裏番組に『鉄腕DASH!』や『世界の果てまでイッテQ』(日本テレビ系)、大河ドラマ『真田丸』(NHK)といった強力なラインナップが並ぶせいもあるが、古舘の満を持してのバラエティ復帰作としては不合格の数字であろう。
『フルタチさん』のウリのひとつは、古舘のマシンガントークである。もとよりプロレスやF1の実況で世に出てきた人である。その喋りに魅力があるのは確かだ。
だが、90年代をふりかえれば、古舘伊知郎の魅力は、他の芸能人とのコラボレーションを通して、より高まるものではなかったか。
古舘伊知郎と和田アキ子の名コンビ
古舘のコラボ相手としてまず思い浮かぶのは和田アキ子だろう。
両者は、80年代からいくつかの番組をこなしており、1994年4月にスタートした新番組『クイズ悪魔のささやき』(TBS系)は、久しぶりの共演となった。この番組は、一般視聴者の“ビンボーアピール”をもとに、スタジオ観覧客の投票に応じて金額が決定。クイズに挑戦することで最大100万円が獲得できる。
この番組の面白みは、古舘伊知郎の“素人いじり”にあった。ビンボーといっても、単にお金がない一般的な貧困のイメージとは異なる。番組には「貯金が1600万円あるが、使うのがもったいないので遊ぶ金が欲しい」「ボディビルを続ける資金が欲しい東大大学院生」といった変わり種の挑戦者が次々と登場した。
そうした人物に和田アキ子が呆れる一方で、古舘伊知郎は、多彩な言語センスを駆使して挑戦者を大まじめに擁護する。
石橋貴明と語りあった『第4学区』
もうひとつ隠れた名番組といえるのが『第4学区』(フジテレビ系)である。1999年と2000年に金曜深夜に断続的に放送された。
番組の内容は極めてシンプルであり、古舘がとんねるずの石橋貴明と酒を飲みながら語らうだけのものだ。番組タイトルは、2人の出身地の学区(古舘は東京都北区、石橋は板橋区)にちなんだものである。
ロケ地は、池袋の東明大飯店、和光のレインボーモータースクール、朝霞の田んぼの中と極めてマニアックな地元スポットが選定されていた。番組では、両者の共通の趣味であるプロレス話、若手時代の思い出話、古舘の視点から見た世間へのツッコミ、さらに姉や友人の死といった深いテーマも語られていた。
これらの名番組の復活を願うことはもちろん、あらたな芸能人と古舘伊知郎とのコラボレーション番組の実現も期待したい。
※イメージ画像はamazonよりSWITCH Vol.34 No.12 古舘伊知郎 TALKAHOLIC しゃべくる魂 テレビ屋の反乱