ちなみに、本作における全話通しての平均視聴率は16.6%。
しかし、視聴率だけでは計りきれない魅力もあるもの。今回『真田丸』の脚本を手掛けた三谷幸喜が、12年前に執筆した大河作品『新選組!』も、視聴率以外の実績で語られるべきドラマの一つ。なにせ本編終了の一年以上後に後日談が放送されるという、前代未聞の厚遇を受けた大河ドラマなのですから。
不祥事で信頼を失っていた11年前のNHK
2005年9月20日。NHKにおいて『NHKは変わります~新生プラン』という、自局の改革プランを伝える番組が放送されました。改革のコンセプトはズバリ“視聴者第一主義”。この前年の2004年、紅白歌合戦の担当プロデューサーによる制作費不正支出問題が、週刊文春の報道により発覚。それを機に様々な不祥事が暴かれていき、同局の評判はガタ落ち。受信料の支払い拒否が続出していました。
こうした状況を受けて、NHKは改めて「国民と共にあること」を決意。その変革に向けた具体的なプロジェクトの一つとして、『新選組!』のアフターストーリー制作が『NHKは変わります~』の中で発表されたのです。
放送終了後に多数寄せられた『新選組!』の続編希望
それにしてもなぜ、既に終了した大河ドラマの続きを作ることが、改革に繋がるのでしょうか? それは『新選組!』の続編制作を求める声が後をたたなかったからであり、NHK的には、その要望に応えることで“視聴者第一主義”を分かり易く打ち出したかったのでしょう。
本編は、香取慎吾演じる主人公、新選組局長・近藤勇が処刑されるところで終了。
それもそのはず。土方といえば、近藤のブレーンとして新選組の実権を掌握した事実上の統率者。その死を以って新選組という物語は終結する。そう考えた視聴者は多かったのです。
愛された山本耕史版・土方歳三
土方歳三を演じたのは、山本耕史。「こいつは"悪い奴"だ、その部分を引き出したい」とは三谷幸喜の弁。三谷の思惑通り、するどくしたたかな眼力のこの役者は“鬼の副長”を好演します。
彼の俳優人生屈指の当たり役として愛されていることは、2015年の朝ドラ『あさが来た』において、約10年ぶりに同じ土方役として再登場したことからも明らか。その“山本版土方”の人気もあって、『新選組!! 土方歳三 最期の一日』は実現したと言えるでしょう。
この作品、時代劇でありながら殺陣や合戦シーンはほとんどありません。山本演じる土方と片岡愛之助演じる榎本武揚の対話・問答がメインという、舞台人の三谷らしい構成。
『真田丸』は終わり、来年からは柴咲コウ主演の『おんな城主 直虎』が始まります。脈々と続いていく大河ドラマの歴史。今後またこの『新選組!』のように、続編がつくられるくらい視聴率以上にファンからの支持率の高い作品が登場してもらいたいものです。
(こじへい)
※イメージ画像はamazonより香取慎吾出演 大河ドラマ 新選組!! 土方歳三最期の一日【NHKスクエア限定商品】