テレビシリーズは欠かさず観ており、サントラまで買ったほど。当然、映画もすべて押さえているし、何ならパンフレットも未だ手元にある。
そんなわけで、あぶデカのゲームも当然押さえている。ファミコンソフトの『もっともあぶない刑事』だ。
発売日は、90年2月6日。
あの『ドラゴンクエスト4 導かれし者たち』のわずか4日前にリリースされた無謀な……いや野心に燃えるゲームである。
ファミコンの進化に逆行するショボいグラフィック&ゲーム性
映画の3作目に当たる同名タイトルをモチーフにしたファミコン版『もっともあぶない刑事』。
リリース時期はファミコンの歴史でも後期に当たる。
スーパーファミコンの登場はこの年の11月であり、PCエンジンやメガドライブといった高性能な家庭用ゲーム機はすでに市場に定着。それを受け、ファミコンのソフトもグラフィックやゲーム内容が限界に近い形で進化を遂げていた。
しかし、この『もっともあぶない刑事』はそんな時代に逆光するかのようなショボ……いや削ぎ落としたデザインに、単調な……いや逆にシンプルな横スクロールアクションだったのである。
熱烈なあぶデカファンとして、このゲームを持ち上げようと思ったが……当時を思い出したら腹が立ってきたので本音をぶちまけると……正直、クソゲーであった。
あまりに簡単すぎてクソゲーというのはこのゲームぐらいかも!?
あぶデカの主役は言わずと知れた鷹山敏樹a.k.a.ダンディー鷹山(舘ひろし)と大下勇次a.k.a.セクシー大下(柴田恭兵)。
そのタカとユウジを2人同時プレイで操れることが売りだったが、マッチ棒のようなキャラ造形で感情移入要素ゼロ。
一応、オープニングでは映画のワンシーンを模したタカとユージがドットで描かれているのだが、アニメーションなしの静止画状態。クオリティも素人レベルでファン以外には絶対に誰かわからない驚愕の低クオリティだ。
基本的には迫り来るヤクザを射殺しながらゴールを目指すのが目的。
確かに、何かと銃を撃ちまくるドラマではあったが、さすがに拡大解釈しすぎである。
敵の動きは単調でバリエーションも少ないので(ドスを構えて突っ込んでくるヤクザやピストルを乱射するヤクザなど)、プレイヤーキャラの異常なジャンプ力にだけ気をつければ、連射しながら走るのみでクリアは容易だ。
またプレイヤーはライフ制だが、敵は1発で即死。普通、理不尽に難しすぎてクソゲーになるものだが、簡単すぎてクソゲーになるのはこのゲームぐらいかもしれない。
実際、筆者は弟との初プレイでクリアできてしまったくらいだ。
ただし、各面の構成は背景が違うぐらいの変化に乏しい有様。しかも、弾が飛び交うことで画面がチラつきまくるので、ストレスは溜まる一方なのである。
どこかで見たことあるゲームの寄せ集めで映画要素はほぼなし
テレビや映画とはまったく関係ないチープ極まりないBGMもひどい。
しかも、レース面と最終面以外は全部同じBGMという手抜きっぷりである。
おまけに、その唐突に登場するレース面は、コナミの往年の名作『ロードファイター』風というか、そのまま丸パクリ的な2D型のレースゲーム面。
せめて、愛機(車)ぐらいは映画に寄せてほしかったが、こちらもまったく関係ない真っ赤なスポーツカーだった。
もっとも、そもそもメインのアクション面がナムコの『ローリングサンダー』の下位互換なのだから、パクリ上等な姿勢は一貫しているのかも知れないが。
面をクリアするごとに流れる映画通りのセリフもゲーム内容との整合性が取れておらず、取って付けた感がバリバリ。
トオル(仲村トオル)や薫(浅野温子)、近藤課長(中条静夫)といった個性的なキャラクターも一切登場しない。
権利関係もあったのかも知れないが、内容に満足したあぶデカファンは皆無だったと断言できる。
そもそも、開発スタッフは映画を観たことがあるのだろうか……?
ゲーム専門誌の評価もセールスもドラクエに完敗!
ゲームメーカーにとって、ドラクエのような国民的人気ゲームのリリース時期を避けるのは恥ずべきことではない。
むしろ、この時期にぶつけることが愚策である。
なぜ、この内容を持ってドラクエに挑んだのだろうか。
『もっともあぶない刑事』は、ファミコン通信のクロスレビューでは40点満点中、合計16点。ファミリーコンピュータマガジンのゲーム通信簿では30点満点中14.75点という低評価。対する『ドラゴンクエスト4 導かれし者たち』は、37点と25.34点の高評価だ。
セールスはもちろん振るわず、ドラクエの抱き合わせソフトにする店も多かったように思う。
その後、映画やテレビ特番で何度となく復活するあぶデカだが、2度とゲーム化されることはなかったのであった。
(バーグマン田形)