ピカチュウがドーナツ、あんまん、弁当に
ポケモンGOはいまだに正式にはプレイできない状態だが、韓国でもピカチュウは大人気だ。街にはピカチュウグッズがあふれ、ピカチュウをモチーフにした食べ物もしばし登場する。
今年秋には、ドーナツチェーン店のクリスピークリームが、ピカチュウの形をしたドーナツを限定発売。
ピカチュウ型のとんかつに、ピカチュウを揚げちゃうのか……と危険な想像をふくらませたのは私だけではないはずだ。一方、韓国では何と「懐かしい」という声もあがっている。
というのも、韓国では以前からピカチュウの形をしたとんかつ、韓国語で発音するところの「ピカチュトンカス」が学校前や市場の屋台で販売されており、既に“思い出の”B級フードとなっているというのだ。
これはポケGOでサンタピカチュウなど探している場合ではない! 町のピカチュウとんかつをゲットしに、ソウル市内へと繰り出してみた。
「ピカチュウ、チュセヨ(ください)」と注文
簡単に見つかるだろうと高をくくっていたのだが、これが全然見つからない。屋台に出会うたびに中をのぞくが、それらしき姿は一度も発見できなかった。著作権問題などで消えてしまったのだろうか……。
そんななか偶然寄ることになったのが、ソウルの隣、仁川市にある昔ながらの市場。ソウル駅から1時間以上かけて崇義駅に向かい、そこからバスで15分の位置にある「土地金庫市場」は、周辺住民しか立ち寄らない小さな市場なのだが、学校帰りの子供たちが屋台に立ち寄る姿を見て、ピンと来た。
もしや……
あの……
黄色いやつは!
「こっ、これはピカチュウですか!?」と聞くと、「ピカチュウですよ」と屋台のおばちゃん。1個1000ウォン(約100円)だそう。
「ピカチュウ、チュセヨ(ください)!」という私の注文に、おばちゃんはピカチュウの足と足の間に無慈悲に割り箸をぶっさし、油の海に投入。
ところでピカチュウってこんな形だったっけか?
細かいことは置いといて、果たしてピカチュウはどんな味なのか……。横にするとソースが垂れてくるので、靴にかからないよう上半身を前のめりにしながら(韓国の屋台では、みんなこんな姿勢で何か食べている)、耳の部分をカプリ。
おおこれは、見た目は薄いがまさにメンチカツ! サクサクの衣の中からジューシーな肉汁が! ……あれっ、ほとばしらないな。
駄菓子屋にあるカツのお菓子を、肉なんか入れてちょっとリアルにした感じというか、いずれにせよ日本人の私にとっても懐かしさを感じる、チープでボリューミーな味であった。
「ピカチュウとんかつは、いつからあるんですか?」と聞くと、「この店を始めて6年になるから、6年前から売ってるけど、もっと昔からあるよ!」とのこと。流行の移り変わりが激しい韓国において、これだけ生き残るなんてスゴいことなのでは? キャラクター商品の域を超えた定着ぶりと言える。
ていうかこれ、ピカチュウではないのでは?
改めて家に帰ってピカチュウとんかつについて検索してみると、10年以上前のブログにもその姿を見ることができた。日本でポケモンが誕生したのは20年前(1996年)だが、ひょっとしてそれより前からあったり……なんてことはないか。
しかしもうひとつ気になることがあった。ネットで見つけたピカチュウとんかつの写真は、私が食べたものよりも耳が長く、よりピカチュウぽいのだ。
どういうこと? そういえば私が食べたピカチュウ、どっちかというと単なるクマさんぽかったな……。
さっそくネットニュースで紹介されていたソウル市内の「通仁市場」に行き、再びピカチュウとんかつのある屋台を探してみた。今度はすぐに見つかった。
そうそう、耳が長くないとピカチュウじゃないよ! そしてお店のおばちゃんが塗ってくれたマスタードソースが、意図せず電気っぽい!
たった1000ウォンなのに食べ応えあり過ぎる揚げ物を何とか完食した後、ピカチュウとんかつについて質問する私に、「昔はどこでも売っていたけど、最近はあまり見ないよね」と店のおばちゃんは話してくれた。「一体いつからあるんですか」と聞くと、「18年ぐらい前かしら」という答え。
すごい! 彼女の記憶が正しければ、本家のピカチュウが誕生し、たった数年でピカチュウ人気が韓国の子供たちに定着、そして地元のB級フードにも影響を及ぼしていたというわけだ。
さらに本来のピカチュウを離れ、耳がある動物っぽい揚げ物なら「ピカチュウとんかつ」と認識されてしまうほど定着している事実に、もう一度驚かざるを得ない。これはもう、韓国伝統のB級フードと言っても過言ではないのでは?
韓国限定ポケモンとして、ぜひゲットしたい一品だ。
(清水2000)