2000年2月、「日本コロムビア創立90周年記念」アーティストとして大々的にデビューした氷川きよし。確かな歌唱力に端正なルックスで、いきなりの大ブレイクを果たしたわけだが、その影に芸能界の超大御所たちのバックアップがあったことをご記憶だろうか?

ビートたけし&志村けんの豪華タッグが全面サポート


それが、氷川きよしの名付け親とされたビートたけしと志村けんだ。
当時、2人が共演していたテレビ朝日系のバラエティ『神出鬼没!タケシムケン』の企画で、デビューを大々的に応援している。


デビュー曲『箱根八里の半次郎』は、いわゆる「股旅もの」。旅から旅へと流れ歩く博徒や侠客を歌う世界観は、通常の演歌に比べさらに前時代的な内容である。それを若き美少年が本格的に歌い上げるギャップが新鮮だった。
「やだねったら やだね」のサビのインパクトも含め、話題性は十分。そこにたけしと志村が絡むのだから、従来の演歌の概念はいい意味で覆されたといえよう。

ヒット祈願イベントで檄を飛ばすビートたけし


デビュー曲『箱根八里の半次郎』は、オリコン演歌チャートで初登場7位を記録。発売1ヶ月の時点で12万枚のセールスとなり、当時大人気となっていた大泉逸郎の『孫』を抜いて1位に。新人としては異例の好記録である。
ヒット祈願イベントではたけしや志村が大暴れ。「警察に押し売りしちゃえよ」「宇多田ヒカルの曲も凄く売れてるけど、そんなのに負けられないよ。600万枚ぐらい売って宇多田ヒカルを抜かないと」など、景気のいいエールで盛り上げた。

たけし&志村が紅白で氷川きよしを応援


さらに、「紅白に出演できたら志村さんと一緒に応援に行っちゃうから」とたけし。この時点ではリップサービスかと思われたが、確かなセールスと人気がそれを後押しする。そして、デビュー年にして奇蹟のコラボ実現の運びとなった。

氷川きよしは、「日本レコード大賞」「日本有線大賞」を始め、最優秀新人賞を総ナメした中での初の紅白歌合戦出場だ。

公約通りに出演したたけしと志村は、毒舌を交えながら応援コントを繰り広げ、「コマネチ」「アイ~ン」も披露する大盤振る舞いぶりで、紅白を盛り上げまくった。氷川も、新人離れした堂々としたステージで、その大きな期待に見事応えている。
2人は翌年の紅白でも氷川の応援コントを披露。見事に瞬間最高視聴率の52.4%を獲得している。

『箱根八里の半次郎』は100万枚を超えるヒットとなり、「やだねったら やだね」は流行語大賞にノミネート。話題に事欠かない氷川は、ワイドショーでも連日取り上げられ、国民的歌手への階段を一足飛びで駆け上がって行く。

アイドル誌の常連となった氷川きよし


デビュー2年目となる2001年も快進撃は続く。2月に2ndシングル『大井追っかけ音次郎』をリリースするが、こちらはオリコン総合チャートで初登場8位に。演歌系では実に8年ぶりの初登場トップテン入りの快挙だ。
日本音楽シーンのチャート専門誌としての実績を誇る『オリコン』では、男性演歌歌手として初めての表紙を飾った。デビュー1年目の演歌歌手にはありえない大抜擢。
芸能界での注目度の高さが伺える。
熱心に支える中年女性ファンはもちろん、その人気はティーン層にも浸透。『明星』『Duet』『JUNON』などのアイドル雑誌にも毎号のように登場し、倍々で人気を拡大していった。

ちなみに、初の写真集『Kiyoshing』のキャッチコピーは「かわいい!セクシー!おいしい!」。スタジオ撮影と沖縄ロケを交え、海では海パン姿も披露したファン垂涎の一冊だ。
「演歌界のプリンス」の異名は伊達ではないのである。

演歌界の常識を次々と覆してきた氷川きよし。紅白にはデビュー以来の連続出場、日本レコード大賞にも連続ノミネート中と、大記録も更新中。さらに、2月からは『ドラゴンボール超(スーパー)』の主題歌で初のアニソンにも挑戦となる。
サービス精神旺盛な氷川とあって、悟空のコスプレを披露する姿も近い……かも知れない。
(バーグマン田形)

※イメージ画像はamazonより新・演歌名曲コレクション4-きよしの日本全国 歌の渡り鳥-【Aタイプ(限定盤)】(CD+DVD) CD+DVD, Limited Edition
編集部おすすめ