大学受験シーズンがスタートした。1月に行われたセンター試験では、カンニング等の不正行為がここ10年では最多となる、12件が報告された。
近年はスマホの不正使用などデジタルガジェットを用いたカンニングが増えているようだ。

言わずもがなカンニングは犯罪行為である。入学試験の場合、不合格になるばかりでなく刑事訴追を受ける可能性もある。2011年の大学入試問題ネット投稿事件も記憶に新しい。大学の定期試験においてのカンニングも、すべての受験科目が単位無効となり、留年、停学、退学を含めた厳しい処分が下される。

そんなカンニングをめぐるコメディ映画が90年代に存在した。1996年に公開された『That'sカンニング! 史上最大の作戦?』である。本作はフジテレビで放送されていた「ボクたちのドラマシリーズ」の映画版として製作された。

「That’sカンニング」のあらすじ


映画の舞台は理系の名門、日本理科大学。キャンパス再開発の話が持ち上がり、悪徳教授が建設業者と結託し、大学寮「シグマハウス」を潰し跡地にホテルを建てようと画策する。
寮の学生たちは、人はいいのだが、いかんせん成績が悪い。カンニングでなんとか試験をクリアしていたが、ある日、寮生の一人のカンニングが発覚してしまう。

これにつけ込み、そんな寮は潰してしまえとなるが、寮生は教授と交渉。
次の定期試験で全員が「オールA」を取れば、寮は存続と約束を取り付ける。そのまま勉強しても「オールA」は不可能なので、新たなるカンニング手段で悪徳教授へ挑もうとするのだ。

ヒロイン役を演じた安室奈美恵


主演の木村見次を演じるのはTOKIOの山口達也。ヒロインの森下由美を演じるのは安室奈美恵である。そのほか、荒木定虎、藤木直人、山本太郎らが寮生を演じる。イケメンの藤木直人がさえないパソコンオタクの学生を演じているのは面白い。

映画の主題歌は安室奈美恵の「SWEET 19 BLUES」である。彼女が歌手としてブレイクする過渡期に作られた。安室は話題性だけでキャスティングされたように見えて、きっちりと女子大生を演じている。
授業で使用する薬品を間違え、爆発騒ぎを起こしてしまうような彼女が理系の名門大へ入学したのは、高校の同級生でもある木村へ思いを寄せているからなのだが、野暮な木村はその気持ちになかなか応えられない。2人の恋の行方も映画の見どころだ。

物語の結末は…?


そして、いざ試験本番。寮から大学へ向かう彼らは、トーマス、エジソン、アインシュタイン……偉大なる理系の先達たちが皆、劣等生や落第生だったと歌いながら教室へ向かう。
さながら“討ち入り”だ。

試験会場で試みられたカンニング手法は、怪我人を装った全身包帯巻きの人間の内部に仕込んだカメラで問題を撮影、それを寮に送って解答を音声で受け取る方法や、教室の巨大モニターに仕掛けをし、大きく解答を映し出す方法。また、外からレーザーで解答を空中に表示させたり、別の校舎の屋上からチアリーダーたちが組体操で化学式を伝えるなど、あらゆる手段が取られた。
力丸一道(山本太郎)に至ってはマッチョな肉体に文字を書き、皆の前で披露。まるで“耳なし芳一”だ。寮生たちはほぼ完璧な回答を書き上げるも、同じ箇所でミスをしていたことからカンニングが発覚。寮は存続するも、学生たちは落第してしまう。

原稿執筆にあたり、本作を見返してみたが、今でも楽しめる作品だった。圧倒的な権力を持つ悪徳教授に、劣等生たちが力をあわせて立ち向かっていく様子は、清々しい。さらに、寮生の父親的な存在である寮夫の珍さんを由利徹、「カンニングは美学」と述べる変人の大学教授を舞踏家の麿赤兒が演じるなど、シブいキャスティングも光る。
『That'sカンニング! 史上最大の作戦?』は90年代日本映画の隠れた名作であろう。

※イメージ画像はamazonよりHero
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