カニかまといえば、ひと昔前に流行った安価かつ便利な食材というイメージがある。しかしそのカニかまは、フランスをはじめとした海外で、思いのほかブームを巻き起こしているというのだ。


そこで、海外のカニかま事情をよく知る全国かまぼこ連合会の奥野勝さんに、カニかまが海外で人気の理由や料理アレンジ法を聞いてみた。

フランスのカニかま消費量は推定年間5万トン超え


カニかまは、いま、世界の中でも欧州での消費量がかなり多いという。奥野さんに推定値を教えてもらった。

●世界中(日本を含む)のカニかま消費量は年間50万トン超(推定)
第1位:欧州全体15万トン(フランスの消費量は年間5万トン超)
第2位:米国6万トン
第3位:日本5万トン
(すべて推定値)

奥野さんによれば、世界の50万トンという量は日本の蒲鉾類(板かまぼこ、ちくわ、揚げ蒲鉾など)の生産量に匹敵する規模だという。また、フランスのカニかま消費量は、日本のそれに匹敵する、もしくはそれ以上になっているようだ。

また、「カニかま」の名称だが、フランスでは「SURIMI(スリミ)」と呼ばれる場合が多く、米国では「Crab stick」「imitation crab meat」などと呼ばれることが多いそうだ。

ちなみに、フランスのカニかまは、日本ように赤色ではなく、オレンジ色をしているものもあるのだそうだ。
これは、フランス沿岸で捕れるワタリガニはゆでると赤ではなくオレンジ色になるためらしい。


カニかまは何故世界でここまで人気なのか



世界中で愛されているカニかま。何故にそこまで受けているのか、奥野さんに聞くと、いくつか理由があるようだ。

●カニの代替として好適
「世界中で、高価な天然カニの資源が減少しています。すると価格が上がるため、本物の価格に比べて安いカニかまは歓迎されています。
また、最近まで、魚介類をあまり食べていなかった国・地域、例えば米国の内陸部、東欧などでは、カニかまは『殻付きでないから食べやすい』『魚臭さがない』点が歓迎されているようです」

●寿司ブームがけん引

「世界で起こっている日本食・寿司ブームもカニかま人気の理由です。はじめは日本食レストランや寿司バーで人気となり、次第に現地のレストラン、ホテルも料理に使用するようになり、今では量販店チェーンで売られ、一般家庭で食べられています。

また、1990年代初頭の欧米における狂牛病(BSE)問題で、肉食から水産物への切り替えが始まりましたが、その時期と“日本食・寿司ブーム”が重なり、さらに日本食は低カロリー(脂肪)・低コレステロールだとする“健康食ブーム”も追風になったと考えられます」

●環境保護の観点から
「カニかまは、資源枯渇の心配のない魚種、例えば『すけとうだら』から作られます。そのため、水産資源、地球環境にやさしい食べ物という観点からも、注目を集めているようです」

●カニアレルギー向け
「カニかまは、一部のアレルギー・フリー製品に限定されますが、カニアレルギーが心配な人も食べられる点が歓迎されています」

世界のカニかま人気は、実に多くの理由が複雑に絡み合って起こっているようだ。奥野さんはこうまとめる。

「カニはおいしく、誰もが食べたいものである一方、高価なお金持ちの食べ物です。その代用品のカニかまは値段が安い上に、味・食感・見た目が本物そっくりで、カニを食べた気分を味わえる、庶民の味方。しかも 調理に手間がかからなく、料理のアレンジがたくさんあって便利という利点も。
さらに、薄味なので自分の好きなように味付けできるといったところも受けている理由だと思います」


フランスなどのカニかまアレンジ



ところで、カニかまはフランスなどで、どんなアレンジで楽しまれているのだろうか。奥野さんにいくつか挙げてもらった。

●定番のカニかまの食べ方
・野菜サラダのトッピング
・スナックまたはアペリティフ(食前酒のつまみ)
例:ちょっとした前菜、カニ肉カクテル、オードブル盛り合わせなど
・パスタ料理の具材
・フランスパン(バゲット)のサンドイッチに挟む具材
など

●一般家庭でのメインデイッシュとして
・「キャセロール」という、厚鍋容器に入れてオーブンで焼く料理の具材

●レストランで
・カジュアルなレストランで、様々な創作料理の具材に。
例:ジュレ、ファルシ、ミルフィーユなど

●ファストフードで
・イギリスやオーストラリアでは、カニかまにパン粉をつけて油揚げしたものが、ポテトフライと一緒にセットで売られている。現地のfast foodの「fish&chips」スタイルで人気。


カニかまは、ただカニに見た目も食感も似ているというだけでなく、便利でアレンジも利き、かつ地球に優しいというあまりに優秀な食べ物だった。
本当に優れているものは国境を超えて愛される。日本ではもはや使い古され、多少“時代遅れ”感があるのは否めないが、今一度、カニかまを見直してみたい。
(石原亜香利)

取材協力/奥野 勝さん(全国かまぼこ連合会)
http://www.zenkama.com/