脚本:渡辺千穂 演出:安達もじり

94話はこんな話
潔(高良健吾)の家に栄輔(松下優也)が遊びに来た。
さくら(井頭愛海)が東京に行きたいというのを反対する潔に対して栄輔は「固定観念に縛られてばかりやとなんも生まれません」「いろんなもんぶちやぶって新しいもんができたり道がひらけたりするんやないやろうか」と意見する。
家に遊びに来ちゃうんだ
あっという間に大急出店が決まる(10日間の限定だけど)栄輔のエイス。
エレベーターから出てきたときのギッとした目つきは、狂犬の潔(46話)に負けてなかった。
お世話になった潔と再会した栄輔は、妙に他人行儀。でも家には遊びに行っちゃう。さくらがいると聞いたからかと思ったが、ゆり(蓮佛美沙子)に対しても心開いている口調だった。
栄輔がゆりを「姉さん」って呼ぶのと、ゆりが「どれだけ探したか」と泣き怒りみたいになったとに「もう〜 元気やったらいいわ」とサバサバっとするのでホッとする。潔もすみれも栄輔に対してなんとなく気まずいふうなので胸が痛い。常識をふりかざす潔に栄輔が真っ向から反対するのもこれからが思いやられる。あんなに仲良かったのにライバル関係になったら、ますます胸が痛くなる。
甘ちゃんなさくら
とくにやりたいこともなく、ただ、いまいる世界(家と学校)がつまらないのと、二郎(林遣都)に影響されているだけで、東京に行きたがるさくら。漠然と家から出たいとか地方から東京に行きたいとかいうさくらの内的宇宙は、山内マリコの「ここは退屈迎えに来て」の世界のよう。
後先考えてないので、当然、五月(久保田紗友)に「まったくさくらはお嬢さんやなあ」と軽くいなされてしまう。さくらみたいな主体性のない人物を好きになれないひともいるだろう。脇役だからまだしも、さくらが朝ドラの主人公だったら厳しい批判にさらされているはず。
わからんもんよ女の一生なんて
93話から引き続きいろいろな人生の描写。94話はヨーソローのママ・すず(江波杏子)のターン。夫は戦争前に病気でひとり息子は戦争で亡くしていまはひとりで店を切り盛りしていたことが判明した。
その話を聞いた明美が、自分と同じおひとり様じゃなかったことに若干落胆しているふうに見えたのは気のせいか。
それにしても、“すず”という名前を聞くとどうしたって「この世界の片隅に」を思い出してしまう。こちらのすずさんも戦中戦後、「この世界の〜」のすずさんのように健気に生活をきりもりしていたのかなあと想像してしまった。スピンオフはすずの若い頃を のん で、戦中戦後の話を!
ほくろの位置が
明美と栄輔、同じように鼻の脇にほくろがある。似たもの同士、孤独を抱えたふたりが結ばれる展開はないんだろうか。
(木俣冬)