松たか子が出産後初の連続ドラマ主演をつとめる火曜ドラマ『カルテット』(TBS系)が早くも話題だ。
この作品で松の演じる真紀は、一見素朴で上品でちょっと天然っぽい30代の女性だが、夫を殺したのではないかとも疑われており、今後ひとクセもふたクセもある本性をあらわしてきそうなキャラクター。


梨園の娘という育ちも影響してか、基本的に清楚で品のよいイメージの強い松だが、ただのおしとやかではない個性的なキャラクターを抜群の演技力で演じ分け、20年以上の長い芸歴の中でも多くのヒット作に出演している。
フジテレビ系で放送されている夜9時のドラマ、通称「月9」が高い視聴率を誇ってきた黄金時代、「視聴率王」の地位を確立したのは木村拓哉だが、その傍にいつもいたのは松たか子だった。

社会現象にもなった『ロングバケーション』


1996年にフジテレビ系の「月9」枠で放送された木村拓哉×山口智子主演のドラマ『ロングバケーション』、通称「ロンバケ」。
木村拓哉が連続ドラマ初主演をつとめた記念すべき作品で、この「ロンバケ」がきっかけで木村は国民的人気を得ていくことになる。

「月曜日はOLが町から消える」と言われるほど、若い女性を中心に爆発的な人気を誇ったこのドラマ。
日本芸術大学を卒業し、音楽教室講師として成形を立てている主人公・瀬名を木村拓哉が演じ、瀬名と同居生活を送ることになる落ち目のモデル・南を山口智子が演じたのだが、瀬名の大学の後輩・涼子を演じたのが当時10代だった松だった。
清楚系女子大生の涼子は、瀬名の片想いの相手でもあるが、のちにヒロインの弟・真二(竹野内豊)と恋に落ちる。


今こそ「シェアハウスもの」(「カルテット」もその一種といえるが)が大流行しているが、当時はまだルームシェアというライフスタイルが広く浸透してはいなかった時代。
「奇妙な同居生活」というテーマは、ヒットの王道なのかもしれない。

木村×松コンビの名作!『ラブジェネレーション』


木村拓哉と松たか子が「ロンバケ」以来の共演ということで話題になったドラマが、翌年1997年の同じく月9ドラマ『ラブジェネレーション』(フジテレビ系)だ。
ちなみに、理子の妹役としてひそかに出演していたのは、のちに福山雅治と結婚することになる吹石一恵。

広告代理店で働く片桐(木村拓哉)と、同じ部署のOL・理子(松たか子)のラブストーリーだが、全11話の平均視聴率は30.8%を記録し、当時の月9において最高記録となった。しかしこの記録を更新するのは、またしても木村×松コンビなのだった……。

月9最高視聴率『HERO』


その最高視聴率ドラマとは、誰もが知るところの「HERO」(2001年、フジテレビ系)。

平均視聴率は34.3%、最高視聴率は36.8%(関東地区)を記録し、なんと関東地区では全話を通して視聴率30%超え。この記録は今も更新されていない。今後も更新されることはないのではないだろうか。
木村拓哉演じる、型破りでチャラいキャラの個性派検察官と、松演じるマジメだが少しとぼけたマイペースなキャラの検察事務官のコンビによって、コメディありシリアスありの捜査活動が繰り広げられていくストーリーが視聴者を釘付けにした。

ふたりの恋愛模様はほとんど描かれず、淡い恋愛感情と思われる繊細な心理描写や、ちょっとしたキュンキュンシーンが登場するにとどまったが、絶妙な間の取りかたやセリフの掛け合いは木村と松の相性の良さを感じさせた。
2014年放送の第2期には松は出演せず、検察事務官役は北川景子がつとめたが、2015年に公開された映画版には松演じる雨宮が再登場。
木村との情熱的なタッグをふたたび披露した。

現在、木村主演の『A LIFE~愛しき人~』と松主演の『カルテット』が同じTBSの冬ドラマとして放送中。このふたりのタッグをまた観られる日も来るのだろうか。
(空町餡子)

※イメージ画像はamazonより松のひとりごと (朝日文庫)