手のひらで世話ができることで一大ブームを巻き起こしたタマゴ型の携帯育成玩具「たまごっち」。エサを与えたり、遊ぶといったコミュニケーションを取りながらキャラクターを育てていくのだが、世話を忘れると不機嫌になったり、死んでしまったりと、1度始めるとなにかと手間がかかるものだった。


そんなたまごっちも、はじめて発売されてからすでに22年が経とうとしているが、小さな子どもに与えるおもちゃとして今もその人気は健在だ。

たまごっちの異常すぎる人気ぶり


1996年に販売が開始されたたまごっちは瞬く間に人気のおもちゃとなった。当時の販売価格は1980円だったと記憶しているが、その入手困難さからか人気カラー(白)などは5万円を超える価格で取引されていたり、エアマックス狩りよろしくたまごっち狩りが発生するなど、社会問題にまで発展した。

たまごっち+PHS=たまぴっち


たまごっちをPHSに内蔵した「たまぴっち」を君は覚えているか?
ヤフオクより(チラシ)

たまごっちはその価格の安さもあり、人気が出ると一気に品薄になってしまう。そんな中、1997年にとある試みが実現した。当時、携帯電話と人気を二分していた移動電話のPHSにたまごっちを内蔵した「たまぴっち」という商品が開発されたのだ。

その価格、なんと4万5000円。一見するとただのPHSなので、持ち歩いていてもたまごっち狩りにあうことは皆無! 非常に安全快適にたまごっちライフを送ることのできる究極の一品なのである。


「たまぴっち」は、同機種間で育てたたまごっちを“おでかけ”させることができ、一緒にご飯を食べたり遊んだり、病気になったら介抱したりと、通信端末ならではの機能が非常に魅力だった。当時筆者は中学生だったが、たまごっち目当てで親に必死に「たまぴっち」をおねだりした記憶がある。

今でこそ中学生でもスマートフォンを持っているのが当たり前の時代だが、1990年代後半の中学生はクラスに5人も携帯電話やPHSを持っていれば多いほうだったのではないだろうか。そんな時代背景も影響しておねだりは一蹴されたわけだが…。

個人的に欲しくてたまらなかった「たまぴっち」だったが、本体価格に加え月々通信費のランニングコストがかかることから、「欲しい」という声の多さとは裏腹にたまごっちほどの人気を獲得することはなかった。

嵐のように過ぎ去ったたまごっちブーム


1996年から1997年の間、これでもかというほど日本はたまごっち一色だったはずなのだが、1998年に入るとそのブームは急速に沈静化を迎えた。
子どもだった筆者はあれだけ欲しかったはずのたまごっち、もとい、たまぴっちの存在を嘘のように忘れ去ってしまっていた。嵐のように過ぎ去ったブームのあと、バンダイは在庫を抱え、大赤字を抱えることになってしまったことなど知る由もなく。

たまごっちシリーズは、メインターゲット層の変更(女子高生から小学生へ)、赤外線通信といった機能強化、カラー液晶化、アーケードゲームや映画化といった変遷を経て、ブームを絶やすことなく長期的なものにして現在に至っている。

だが、「たまぴっち」についての続報は聞いたことがない。やはり「たまごっちつき携帯電話」を流行させるのは難しいものなのか…と物思いにふけりつつ、筆者はスマートフォンアプリ「スマホで発見!!たまごっち」(iOS版480円/Android版350円)をプレイしながら今日もちまちまと「“おやじっち”になれよ!」なんてつぶやいている。

(空閑叉京/HEW)