なぜなら、正体不明のロックバンドによる楽曲が、3曲同時にTOP10入りしていたからです。
3曲同時にTOP10入りした『DIR EN GREY』
ロックバンドの名は、『DIR EN GREY』。今年でデビュー20周年を迎え、今ではヴィジュアル系の大御所として知られる彼らも、当時はまだ、知る人ぞ知る存在。
しかし、99年1月20日にメジャーデビューを果たした際のシングル『アクロの丘』『残-ZAN-』『ゆらめき』は、いずれもタイアップ付きという、新人としては破格の扱いを受けていました。(『アクロの丘』⇒『COUNT DOWN TV』1999年2月度ED、『残-ZAN-』⇒『人気者でいこう!』(テレビ朝日系)のED、『ゆらめき』⇒『ワンダフル』(TBS系)枠内放送アニメ『日本一の男の魂』のOP)
X JAPANのYOSHIKIが楽曲プロデュース
なぜ、このような特別待遇でのスタートを切れたのかといえば、インディーズ時代からオリコンのシングル・チャート上位に作品を送り込んでいたり、インディーズバンドとして初の日本武道館公演を成功させたりと、既に実績十分だったからに他なりません。
また、プロデューサーにはあのX JAPANのリーダー・YOSHIKIを迎えており、まさに期待の大型新人といった風格をたたえていました。
そんな規格外の新人・DIR EN GREYが、テレビというフォーマットでは収まりきらない過激なパフォーマンスを披露し、苦情殺到となった出来事が18年ほど前にありました。
ゴールデンタイムに不似合いなハードコアな楽曲
事件は、DIR EN GREYがメジャーデビューした直後、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に生出演した際に起こりました。このとき演奏された楽曲『残-ZAN-』は、ボーカル・京が狂った主人公になりきって、放送コードギリギリな歌詞を、絶叫混じりに歌い上げるというもの。
当然、一般ウケするはずもありません。ファンからしても、同時リリースした曲の中でもやや柔らかめな『アクロの丘』か『ゆらめき』をもってくるかと思っていたところからの、まさか過ぎるチョイスだったことでしょう。
前番組が『クレヨンしんちゃん』だったことも仇に?
しかも、彼らの出番は1組目。この前に放送されていたのは、『クレヨンしんちゃん』。国民的人気アニメの余韻に浸りつつ、流れで『Mステ』を視聴した子供たちも大勢いたはずです。
特に凄かったのはステージ演出。逆さ吊りの男がのた打ち回ったり、壁にめり込んだ男がわめき散らしたり……。このようなホラー過ぎる仕掛けの数々が、しんちゃんで笑った後の良い子のみんなを、恐怖のどん底に突き落としたのは言うまでもありません。
結果的に演奏終了直後、テレビ朝日視聴者センターへクレームが殺到する事態に発展しました。
いやはやさすがはV系バンド、破天荒にもほどがある……と思いきや、実はこれ、スタッフ側が「Dir en greyなのだから半端は許されない」と気合を入れて、セットをこしらえたために、こんな感じになったのだとか。それにしてもこの時の演奏風景、司会のタモさんがどんな顔して見ていたのか……気になるところです。
(こじへい)